初めてキスをしたのは中学校の卒業式。
呼び出されて、何事かと思っていたら突然唇を奪われた。
それから何度キスを繰り返しただろう。
奪うように噛み付くキスや、触れるだけの優しいキス。
「お嬢、キスうまくなったな」
長い長いキスから解放されると、私は呼吸を整えようと息を吸う。
そんな姿を間近で見つめる寅は嬉しそうに笑う。
「寅と何度キスしたと思ってるの?」
「さあ?」
「でも、寅って・・・」
私の腰に回されたままの手がどうにも熱い。
寅に触れられる部分は全て熱い。
先ほどまで触れていた唇だってそう。
触れれば火傷してしまうのではないかというくらい熱い。
私は寅としかキスをした事ないけれど。
寅とのキスはとても気持ち良い。
たまにくらっとしてしまうし、離れがたい。
「俺がなんだよ」
「キス上手よね」
「そりゃどうも」
腰を撫で回す手つきがいやらしくて、私はその手に自分の手を重ねる。
もうこれ以上は駄目、というように。
「・・・私以外の人としたことある?」
ずっと気になっていた。
寅は女性の扱いに慣れているんじゃないか、と思う事がある。
キスより先の行為はした事ないけれど、それでも私をからかうように触れてくる事がある。
私はそんな寅の態度に振り回されてしまう。
「はぁ?」
「だって、寅はいつも余裕そうじゃないっ!」
「・・・あのなぁ」
腰から離れた手はそのまま私の頭へと移動し、両手でぐしゃぐしゃと髪をいじられた。
「ちょっ、とら・・・っ」
「お前、馬鹿だろ」
抗議しようとするとコツン、と額と額がぶつかった。
すぐ近くで蒼い瞳と、髪の隙間から金色の綺麗な瞳が見えてどきりとした。
寅の瞳ってどっちも綺麗なのよね。
「俺とお前が知り合ったのが小6だろ?
その前に気になる奴なんていた事ねーし、
お前と出会ってからはお前しか必要としてねーんだけど」
子供に言い聞かせるようにいつもより優しい声色でそんな事を言うから
私の頬は紅潮してしまう。
「私も・・・そうよ」
「当たり前だろ、お前は俺のものだし、俺はお前のものなんだから」
「ええ、そうね」
恥ずかしくなって、寅の背中に腕を回した。
「顔見せろよ、撫子」
「嫌よ、恥ずかしいもの」
「ったく」
しょうがねぇな、と少し笑う寅の声が耳元で聞こえて、そのまま寅にきつく抱きしめ返された。
私はこれから先も寅としかキスしないと思うの。
だからきっと、寅もそうよね?