彼女に友達が出来ました(アキアイ)

※灰鷹のネタバレを含みます。ご注意ください

 

 

 

 

 

 

普段、アイちゃんのクラスに顔を出すということはほとんどない。
下級生が上級生の階の廊下を歩いてる事自体良い顔をされないし、そもそもアイちゃんが恥ずかしがるのであまり行かないようにしている。
が、今日は緊急事態。アイちゃんのクラスを覗くと、窓際の席に座っているアイちゃんを見つけた。

「ア・・・」

名前を呼ぼうか一瞬悩み、オレの横を通り過ぎていこうとした女子生徒を捕まえる。

「すいませーん。湊戸先輩呼んでもらえますか?」

「湊戸さんね、ちょっと待ってて」

その女子生徒がアイちゃんの元へ行き、オレを指差す。
アイちゃんはそれでようやくオレの存在に気付いて席を立った。

「アキちゃん、どうしたの!?」

「いや~、今日携帯忘れちゃって。アイちゃんが連絡返ってこなくて心配しないようにーって思ったんだけど」

「あ、そうなんだ。分かったよ」

アイちゃんはオレの言葉に頷く。
オレはさっきまでアイちゃんと楽しそうに話していた子を気付かれないように見る。

「うん、それだけ。じゃーね」

オレはひらひらとアイちゃんに手を振ると、自分の教室へと向かった。
あー、オレが同い年だったらアイちゃんと机を並べて授業を受けることも出来たのに、と何度考えたかわかんない事を思い浮かべる。
転入生がやってきた、とアイちゃんに聞いた時はあんなに仲良くなると思っていなかった。
放課後だったり、休日だったり、遊んだりしているようだ。
彼女とどこへ行った、楽しかった・・・といったような話もよく聞くようになった。

(・・・女の子に嫉妬するっていうのもなー。でも、イケメンっぽいカオしてたし)

アイちゃんがあんなふうに作った笑顔じゃなくて、オレにも見せてくれるような顔で笑うのを女の子に見せてるのは初めて見た気がする。
それだけ仲良くなったということだろう。

 

とられたら面白くないな、と思いながらもオレはその後の授業をぼんやりと受けた。

-放課後。
今日は一緒に帰る約束をしていたので、下駄箱のところでアイちゃんが来るのを待つ。
すると、例の彼女が現れた。

「どうも」

「どーも」

オレの存在は認識しているようで軽い言葉をかわすと、

「今先生に呼ばれてたからもう少しかかるかも、彼女」

「あーありがとうございます」

へらっと笑ってみせると、彼女は何かを察したのか苦笑いを浮かべる。
そうして、軽く会釈をしてオレの横を通り過ぎていった。

・・・まぁ、男でも女でも関係ないんだけど。オレが妬いちゃうのは。

苦笑いを浮かべながらも、彼女の背中を見送る。
と、色黒の生徒が彼女に声をかけた。
あの人も確か転入生・・・だったかな?振り返った彼女の表情を見て、オレは固まる。

(・・・あれは、もしかして)

恋をしている、ということが一目見てわかる表情だ。

 

「ごめんね、おまたせ!アキちゃん」

「すっげー待ったよー」

「えぇ?ごめんね!」

アイちゃんが駆け寄ってきてくれたので、わざとらしく拗ねてみせるとアイちゃんは申し訳なさそうな顔になる。

「嘘だよ。アイちゃん困らせたくなっただけ。帰ろっか」

「うんっ!」

アイちゃんと並んで歩き始める。
ちらりとアイちゃんに視線を送ると不思議そうに首をかしげられる。

「どうかした?」

「アイちゃんってオレのこと、大好きだーって顔してるよね」

「え!?そ、そう?」

アイちゃんは慌てて両手で頬をおさえる。
それが可愛くて、オレは笑う。

「女の子は恋をしてると、より一層可愛く見えるよね」

「・・・アキちゃん、恥ずかしいからあんまりそういう事言わないでよ」

「ごめんごめん」

アイちゃんと話す彼女は楽しそうに笑っていて、正直オレのライバルなんじゃないかって思ってしまった。
だけど

「アイちゃん、友達できてよかったね」

「・・・うん、ありがとう」

アイちゃんの手をきゅっと握ると、恥ずかしそうにしながらも手を握り返してくれた。
オレの大事な彼女に友達が出来たこと、素直に喜んであげてもいいみたい。
なんてことをさっきみた光景を思い出しながら、考えていた。

 

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