もう復讐に身が焦がされることもない、今はただ穏やかな日々。
いや、穏やかだがカルディアの毒のことも、ヴァンパイアたちとの事もある。
何もすることがないわけではない。
それでも、とても心が穏やかに過ごせていることが幸福だと俺が知っている。
何度も何度も突き放したのに、駄々っ子のように最後まで俺を求めたカルディア。
彼女に出会った頃はただの綺麗なだけの人形のような女だと思っていた。
それがいつの間にか絆されていた。
「カルディア」
二人だけの朝。
俺が得意料理を作ってやろうと思っていたのに、キッチンへ行くとカルディアが既にそこにいた。
窓から差し込む太陽光によって彼女がいつもより輝いて見える。
「あ、ヴァンおはよう。
食事の支度が出来たら起こそうと思っていたのに」
顔だけこちらに向けると、にこりと笑った。
ああ、なんというか・・・朝から可愛い
「お前に起こされるのも好きなのだけどな。
いつまで経っても顔を赤くして起こしに来るのが面白いんだが、たまにはな」
「それはヴァンが裸で寝てるから・・・!」
眠る時くらい、煩わしいものから解放されたいのだ。
だから自ずと服は脱ぐ。
初めて俺を起こしにきた時のカルディアは顔を真っ赤にして、目を潤ませていた。
あんな表情をされたら男なら誰だってぐっと来るのだ。
ベッドに連れ込むことも現状難しいのだからからかうことくらい許してもらいたい。
「いつかはもっと間近で見ることになるんだぞ?
今から免疫をつけないで良いのか?」
「間近?」
そういうことに疎い彼女は何のことだか分からないらしく小首をかしげる。
色々教え込むのはもっと先の楽しみで良いだろう。
「まあ、今はこれだけで良い」
彼女の隣に立つと、その緩やかなウェーブを描く髪を掬い上げる。
そうして、その先にそっと口付ける。
「・・・っ!!」
「おはようのキスだ」
「恥ずかしい、」
顔を真っ赤にすると視線を食事に支度のためにそちらに戻す。
その姿がやはり可愛くて、俺は自然と笑みをもらした。