初めての恋、
初めての恋人。
穏やかな休日の昼下がりに恋人と手を繋いで歩く。
ささやかだけど今の私にとっては何よりも幸福な時間。
「見て、累。
こないだ咲いていなかった藤の花が咲いてるわ」
「本当だ、綺麗だね」
目の前に広がる藤の花に声をあげると、累も優しい声で頷いてくれる。
ただそれだけの事だけど、私はやっぱり嬉しくて笑顔になってしまう。
「ねえ、ツグミ」
「なぁに?」
「藤の花よりも君のほうが綺麗だね」
「・・・!」
さらりとそういう事を言っては紅くなる私をみて楽しんでいる気がする。
繋いでいた手に少しだけ力がこもる。
「そ、そういえば・・・!
花って色とりどりだけど、鳥もいろんな色がいるわね。どうしてかしら」
先日書店を巡っているときに見かけた一冊の本。
そこには様々な鳥が描かれていてとても驚いた。
私たちの所属する名前と同じフクロウだって、たくさんの種類がいたのだ。
そして赤だったり、黄色だったり、蒼だったり・・・たくさんの色合いの鳥がいることに驚いた。
「僕も昔同じ事思って調べたことがあるよ」
「え、本当?」
「うん。鳥に色々な色がいるのは、異性の気を惹くためらしいよ」
「鳥が・・・?」
「そう。以前君がドレス姿で僕を魅了したのと同じように、ね。なんて」
累は冗談めかして笑うと繋いでいた手を自分の口元まで持っていき、手の甲に口付けを落とした。
「・・・累はずるいわ」
さっきとは比べ物にならないくらい、紅くなっているであろう自分の顔を想像するのはやめよう。
手をほどくと、羞恥心を誤魔化すように彼の腕に自分の腕をぎゅぅっとからめた。
「・・・君のほうがずっとずるいよ」
累の顔を盗み見ると少しだけ紅くなっているような気がした。
満足げに笑うと、累も小さく笑った。