「ちょーっと飲みすぎなんじゃないか」
「ええー?そんなことないよぉ」
えへへ、と甘えるように俺の肩に擦り寄ってくる。
その姿はどうみても酔っている。
酔っている以外何があるんだろうか。
汗のかいたグラスを持ち直し、口をつけるがすっかり薄まっていた。
横目で未白の様子を伺えばご機嫌だ。
今日もいつものようにアトリエに来て、俺が作業する傍らせっせとステンドグラスをつくっていた。
するりと俺の隣に収まった彼女は、今まで傍にいない時間どうやって過ごしていたか思い出せないほど俺の生活を侵食していった。
じわじわと外堀を埋められた、というか・・・まぁ、なんというか。
進捗も順調だし、今日は俺の家で食事することになり、スーパーで食材を買い込んだ。
あいつの大好きな柘榴が売っていたのでそれもかごに放り込む。
学生とはいえ、二人とも二十歳を過ぎた成人だ。
食事も済み、口直しに柘榴を使った簡単なサワーを作ってやろう、と思い立った。
美味しいおいしいと飲む彼女の笑顔が可愛くて、ついつい飲ませすぎた。
「・・・未白、水飲むか?」
「ううん、いらなーい」
「ああ、そう」
すっかりご機嫌になった未白は俺の手に自分の指を絡めるときゅっと握る。
いつもより熱い指先。
紅くなった頬に、ちょっとだけ舌足らずになってる口調。
恋人のそんな姿をみて、ぐっと来ない奴はおかしいだろ。
「ふふーん」
「どうした?」
「これね、わたしの宝物なんだー」
そういって繋いでいない手をぐっと天井にむけて伸ばす。
そう、そっちの手には俺が贈った指輪が輝いていた。
「ん・・・そっか」
未白の頭をぽんぽんと撫でるとまたにっこりと笑った。
「かいねくん、あしたもあさってもいっしょにいよーね」
「・・・ああ、おまえがいてくれる限りな」
「わたしがいなくなったらおわりなの?」
「・・・嘘だ。おまえがいなくなっても絶対見つけて、手掴む」
未来の約束、というにはまだちょっと足りないだろう。
だけど、彼女がとびきりの笑顔でそう言ってくれるからきっと明日もこうやって一緒にいられるんじゃないだろうか。
「うん、やくそく!」
でも、こんな風に無邪気に煽った責任はとってもらおうじゃないか。
氷ですっかり薄まった液体を一気に飲み干すと、少しだけ大人のキスを贈った。