初めて、私を私としてみてくれたヒト。
私が、初めて欲しいと想って触れたヒト。
「どうした?そんなにじっと見つめて」
いつも通り書類の山に囲まれたベル。
ベルの正面を陣取り、書類をせっせと片付けていく彼の姿を頬杖をつきながら見つめていた。
「頑張って働いてるなーって思って」
ベリアルがこういう事務仕事をしないからベルに回ってくるんだという話を以前聞いた。
今、私がいるのだから他の人に分散するように仕事を采配することも可能だろう。
が、やはりベルの仕事ぶりに敵うひとはおらず、やっぱりベルに甘えてしまう。
私が手伝おうとするとそれはきっぱり断るんだから、私にできるのは見守ることくらいかな。
「ならあんたも・・・いや、いいや」
「?」
書類から顔をあげると、視線がぶつかる。
思いのほか近かったことに驚いたのか、ベルは言おうとした言葉を飲み込んでまた書類に目を落とした。
「ねえ何を言おうとしたの」
「なんでもないこと」
「なんでもないなら言えるでしょ」
ペンを握るベルの手を人差し指でなぞる。
ぴくり、と反応するも私の言葉に返事をする気はないらしくペンを走らせる。
それが面白くなくて、私は手の甲に触れるのをやめて今度は頬をなぞる。
眉間に皺が寄るのを見てくすりと笑うとあっという間に限界が来たのか、ベルは顔を上げた。
「~、あんたさぁ」
「なに?」
にっこり笑ってみせると、空いている手で顔を引き寄せられる。
彼の唇が重なり、一度下唇を軽く吸うとそのまま隙間から舌を割り込んでくる。
唇が触れ合うのと同じように、舌が触れ合うのも好きだ。
酸素が足りなくなって、苦しくなってもベルが離してくれないことが嬉しいなんてどうかしてるのは分かってる。
私がベルでいっぱいになってるように、ベルも私でいっぱいになっていたらいいのに、っていつも思う。
「んっ・・・はぁ、」
ようやく離れた唇に、キスの名残が見える。
ベルの唇を指でぬぐうと、ベルの表情が崩れた。
「あんたって、本当に俺のこと好きだな」
そんな顔をして言われたら恥ずかしくて逆に口を閉ざすわけにはいかない。
まだ少し熱い頬を誤魔化すように笑ってみせる。
「・・・ええ、もちろん。あなたが大好きよ、ベル」
私を抱き締めようとした手が止まる。
ベルはようやく机越しだったのを思い出したようだ。
小さく舌打ちすると、私の隣まで来て抱き上げられた。
「書類はいいの?」
「・・・あとで手伝ってくれよ」
ベッドにおろされたところでそれ以上の言葉はつぐむ。
返事をするかわりにベルの背中に手をまわした。