手のひらに結界の種を乗せる。
あの戦い以来、この種が光ることはなくなった。
「なんだかルードくんみたいだね」
「どうかしましたか」
「この種」
手の中にある結界の種を見せると、ルードくんは笑った。
「懐かしいですね、なんだか」
「うん・・・でも、私はこの種をよく取り出すよ」
「そうなんですか?」
「だって、この種が私とルードくんを繋いでいてくれたから。
いつだってルードくんを近くに感じられたよ」
「・・・そう、ですか」
照れたとき、彼はよく口元を覆って隠そうとする。
初めて出会った頃は全然笑ってくれなかった。
キリっとした顔をしていて、年下なのに先生みたいでしっかり者のルードくん。
でも、褒めるときは褒めてくれて、嬉しかったなぁ。
「ふふ」
「・・・どうしたんですか」
本人を前にして、思い出し笑いってなんだか失礼かもしれない。
けど、ルードくんと出会って、みんなで一緒に暮らした日々や、離れた過ごしたあの日々はかけがえのない時間だったと思うから。
「ルードくんのこと、大好きだなぁって」
「・・・っ」
ルードくんが私の手を取ると、手の甲にそっとキスを落とした。
「私も、あなたが好きです。梓さん」
恥ずかしくて、私から目をそらしてしまう。
「どうして目、そらすんですか」
「だって恥ずかしくて」
「あなたから好きだと言ってきたのに?」
「だって、ルードくんがかっこいいことするから」
「・・・そうですか」
ちらりとルードくんを見ると、嬉しそうな表情に変わっていた。
あ、知ってるルードくんの表情だ。
年下のルードくんが、少しずつ大人の表情に変わっていく。
その度に私はドキドキしてしまうけど、まだもう少しだけ。
この種をくれた頃の可愛くてかっこいいルードくんのままでいてくれますように。そんな事を願いながら私は微笑んだ。