私が出来ること(惇関)

ふと視線を広場にやると夏侯惇が忙しなく働いていた。
たまに声を荒げたり、嘆いた声を出したり、忙しい人だとくすりと笑ってしまう。
ああ、またからかわれてるんだなとか傍にいなくても想像出来て楽しい。
最近は忙しいのか、二人でゆっくりと会う時間があまり取れず少しだけ寂しい気持ちもある。
でも、頑張っている彼のことを思うとそんな我侭も言えない。

「おや、お嬢さん。どうしたんだい?」

廊下に立ちつくしたままだった私に通りかかった賈詡が声をかけてくる。

「賈詡、なんでもないのよ」

「んー?そうかい?」

そう言いながらも立ち去ろうとせず、私の視線の先を見るとほうほう、と呟いた。

「夏侯惇が恋しい、と」

「ちがっ・・・!」

「まぁ確かに最近は休む暇もなく働いているようだからねぇ」

「私はただ・・・体を壊さないか心配しているだけよ」

あまり自分の心の内を詮索されたくなくて、賈詡との会話を早く切り上げようとする。

「体が心配ならお嬢さんが労わってやれば?」

「え?」

どういう意味か、問いかける間もなく賈詡は立ち去ってしまう。
労わる・・・
私が出来ることで彼が少しでも安らぐのなら、なんでもしてあげたい。

何をすれば良いか考えているとふと頭に浮かんだのは猫族の皆の事。
閃いたものを実行に移すべく、私は慌しく廊下を駆けていった。

一日の業務が終え、自室へと戻る。
自室へ戻ってもまだやらねばならぬ事があるので、関羽に会いにはいけそうにないな。
そんな事を考えながらも一目で良いから会いたくて、彼女の部屋に自然と足が向いていた。

「関羽、いるか」

扉越しに声をかけるとぱたぱた、と駆ける音が聞こえて扉が開いた。

「夏侯惇っ!ちょうど私も会いに行こうと思っていたの!」

嬉しそうな顔をして、俺の訪問を喜ぶ彼女が愛らしくて俺も自然と笑みが零れる。
もう何ヶ月も会っていなかったのではないかと思うくらい、彼女の笑顔が懐かしく、胸の奥が温まるような感覚だ。

「どうぞ、入って」

俺の手を取ると部屋へと招き入れてくれる。

「さ、横になって」

寝台の前まで連れてこられ、関羽がそんな言葉を言った。
横になれ、だって?

「は?おまえっ、」

今までそんな乗り気で夜を共にしようなんてした事がない関羽がそんな事を言うなんて。
動揺してつい声が大きくなってしまう。

「どうしたの?身体をほぐすから横になって欲しいんだけど」

「・・・身体をほぐす?」

「そう、夏侯惇疲れてるかなって思って。
世平おじさんに昔よくしてあげたのを思い出して」

「・・・っ、悪いな」

純粋な瞳でにこにこしながらそんな事を言われては自分がまさか邪なことを考えていたとはいえず、
少しぶっきらぼうな態度になってしまったが俺は彼女の寝台へとうつぶせになった。

「疲れてるところ、ない?」

「んー・・・腰まわりとか」

「わかったわ」

関羽の寝台は彼女の甘い香りがした。
そんなことを意識してしまうと一度引いた熱が再び顔へと集まる。
余計なことを考えるなと自分に言い聞かせていると腰のあたりに彼女の両手が触れた。
俺の身体をいたわるように優しい手つきで俺の身体を揉んでいく。
心地よさについうとうととしてしまう。
このまま今日は眠ってしまっても良いのではないか。

そんな事を考えていると身体に重みがかかる。
この感触は・・・、

「かんう、」

「あ、ごめんなさい。肩周りをやるには乗っかった方がやりやすくて」

そう、彼女は今俺の身体の上に乗っていた。
その重みに眠気は一気に吹き飛び、先ほど宥めすかした邪な気持ちが蘇る。

「わざとやってるか?」

「痛かったかしら」

ごめんなさい、と言って彼女の手が俺の身体から離れそうになる。
もう限界だ、

俺は彼女の手を掴むと、体勢を変えて仰向けになった。
視線がぶつかる。

「お前はいつからそんな大胆なことをするようになったんだ?」

「え、夏侯惇っ?」

俺が姿勢を変えるとは思ってなかったらしく、驚いた顔をした後、この体勢が恥ずかしいと気付いたらしく頬を赤らめた。

「悪いけど、我慢出来ない」

掴んだままだった手を引っ張るとバランスを崩して俺へと倒れこんでくる。
空いてる手で彼女の頭を固定するとそのまま口付けを交わす。
驚いて目を見開くもそのまま口付けを深めていくと関羽は次第に目を閉じて俺を迎い入れた。

口付けを交わしながら彼女を組み敷く体勢へと変え、そのまま彼女の服に手をかける。

「関羽、お前が足りないんだ。もっと欲しい」

唇を離すとそっと耳元で囁く。

「かこうとん、・・・私もあなたが欲しいわ」

恥ずかしそうに言葉を紡ぐ彼女に愛おしさがこみ上げてきて、再び口付けた。

「夏侯惇・・・あなたを労わるつもりだったのに」

行為が終わって、俺の腕の中で関羽がぽつりと呟いた。

「どうしたんだ、急に」

「だって最近の貴方はとても忙しそうだったから。
何か出来ないかなって考えて色々と用意してたのに」

ほら、と言われて少し離れたところにある机の上を見ると何やら菓子のようなものがあった。

「貴方に食べてもらおうと思って用意していたのに」

「菓子も嬉しいけど・・・俺はお前の方が嬉しいんだけどな」

くすっと笑うと先ほどの行為を思い出したのか、再び赤くなる。
髪をすくうと口付けを落とす。

「ありがとう、関羽」

俺が微笑むと、関羽も嬉しそうに微笑んだ。

良かったらポチっとお願いします!
  •  (49)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA