責任とって(ラスラン)

緑の滴亭で日付が変わるのを迎えるのは何度目だろうか。
仲間たちとわいわいと酒を呑んでいると、俺の隣にいたランが気付けばうとうとと舟をこいでいた。

「あれ?もしかして眠っちゃったんスか?」
「ああ、そうみたい」

ランの肩を抱き寄せると、大人しく俺の肩にもたれかかってくる。
酒場にいるのに、ランからは優しい香りがする。

「下に運ぶけど、おまえ来るなよ?」
「さすがに邪魔をしようなんて思わないっス」

ソロンは苦笑いを浮かべる。
ランの顔を見ると、俺にもたれて楽になったおかげなのか、さっきより気持ち良さそうな顔で寝ている気がする。ふと、ソロンからの視線が強くなったような気がしてソロンを見遣るとにやりと笑われる。

「すっかり骨抜きっスね」
「はいはい、そうだよ」

あしらように言葉を返せば、他のやつらも気付けば俺たちの会話を聞いていた。

「二人を見てると、俺も彼女ほしいなぁって思いますからね」
「分かるなぁ、それ。独り身にはつらいぜ」
「おまえらなぁ・・・」

羨ましい羨ましいと口々に言われると、呆れるしかない。
グラスに残っていた酒を煽るように飲み干した。

「俺だってな、こんなに好きになると思わなかったよ」

酒が入っているからか、いつもより他人に本音を吐露しやすくなっていることは認めよう。
可愛い可愛い俺の彼女を羨ましいやらなんやら言われればちょっと良い気分にもなるだろう。
だけど、男共に自慢するよりも今はやりたいことがある。

「地下に降りるから、誰も来るなよ」
「わかってますよー」

ひょい、とランを抱き抱えると突然何が起きたのか理解できなかったらしいランはまだ完全に開かない目をなんとかうっすら開けた。

「ごめん、起こして」
「ラスティン?」

階段を下り終わる頃には、ランの瞳は完全に開いた。

「ねえ、ラン」

目が合うとにっこり笑ってみせる。
ランはちょっとだけ気まずそうに笑い返した。

「さっきの聞いてた?」
「・・・なんのこと?」
「俺が、ランのことすっごい好きだってみんなに宣言したこととか」
「・・・っ」

ランの顔があっという間に真っ赤になったので、返事を聞かなくても分かる。
さっき、肩に触れていたランがぴくりと動いたから分かったのだ。
ああ、聞いちゃったなぁ。ちょっと・・・いや、かなり照れる。

「ラスティンはずるいよ・・・」
「ん?」

顔を隠すように俺の胸元に額を押し当てる。
あー、俺の心臓の音聞こえちゃってるだろうな。

「わたしも、ラスティンのこと、こんなに好きになるなんて思ってなかったもの」

小さい声で、ランは恥ずかしそうに告げた。

「もうごめん。降参」

階段を降りきると、ソファの上にランをおろした。
そのまま顎を軽く持ち上げて、唇を重ねた。
余裕のないキスでごめん。
だけど、今すっごい余裕ないんだ?
それはランの言葉のせいだから・・・

「ランが可愛い事言うことになった責任、俺にとらせて?」

潤んだ瞳で俺を見つめると、ランはこくりと頷いた。
夜は、長い。

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