一つ屋根の下に住むということはイコール!同棲ということだと思いマス。
プロポーズもようやく頷いてもらえて、晴れて僕とゆのはチャンは婚約者!ということになりまして・・・
「ねえ、ゆのはチャン。
一緒の部屋でも良いんじゃない?」
最初の頃は一日の仕事が終わると、ぐっすり眠ってしまったと話していたゆのはチャンも、
今では立派に仕事が終わってもそこそこの体力を残していられるようになった。
そのおかげ、僅かだけど恋人同士の時間というものが持てるようになった。
季節は春。
冬の間は仕事が終わってから散歩に出掛けるということはさすがに出来なかったけれど、
最近は時間が出来ると二人でふらりと散歩に出掛けるようになった。
「ダメです。他のひとたちに示しがつきません」
「そんな事言ったって、みんな知ってることでしょう?
ボクとゆのはチャンは相思相愛のラブラブカップルから新婚さんいらっしゃーい!も裸足で逃げるようなあまーい夫婦になるってことも」
「裸足で逃げるってなんですか」
くすりと笑うと、ゆのはチャンは繋いでいる手を少しだけ強く握る。
うーん、もう一押し・・・なのか。
「じゃあ、一緒の部屋で暮らすのは一旦置いておく」
「一旦?」
「そう、とりあえずね。
だから、週に何回かお泊り会をしよう!」
「・・・お泊り会っていう年じゃありません」
「えぇ、いいでしょ?お泊り会。
冬の寒い布団もしくしくと泣きながら堪えたんだからご褒美があってもいいと思うんだけどなー」
節度ある生活をすること。
公私混同しないこと。
どちらも頑張って守っているから、そろそろご褒美がほしいな、と思ってしまうのはゆのはチャンのことがすっごく好きだからなんだけど。
ちらりと様子を伺うと真剣な表情をして考えていた。
・・・この子は仕事を第一に考えすぎて、自分を甘やかすことを知らないんだから。
きっともっとボクにもたれてしまえば、楽になるのに。
それをしない強さも愛おしいが、たまには彼氏に甘えたっていいじゃないか。
「分かりました」
「え?」
「次のお休みの前の日、お泊り会しましょう」
「え!いいの?」
「もう・・・言い出したのは高平さんじゃないですか」
「でもまさかオッケーでると思ってなかったし!」
この角を曲がれば、福寿荘だ。
ゆのはチャンが立ち止まるので、ボクもそれに従う。
外灯に照らされたゆのはチャンの頬は心なしか紅潮していた。
「私も、たまには高平さんに甘えてもいいかなって」
「・・・っ」
不意打ち。
完璧に不意打ち。
甘えてくれたらいいなーとか願いすぎて幻聴かと思ってしまうくらい。
「ああ、もう」
「え・・・っ」
思い切りぎゅーっと抱き締めた。
抱き締めることもあまり許してもらえない(けど、勝手に抱きつくよね!)。
だけど今日はゆのはチャンもぎゅっと抱き締め返してくれた。
「ゆのはチャン、大好き」
「・・・私も、好きです」
「そこは大好きって言ってほしいなぁ」
「嫌です」
「ええー」
ちょっと調子に乗りすぎたかな。
でも、今日のゆのはチャンはいつもより俺に甘くて可愛くて、頬が緩む。
「ほら、戻りましょう」
「はーい」
身体を離し、手と手を繋いで歩き出す。
新婚さんになる前、残り僅かな恋人の時間。
楽しい思い出を沢山作れますように!
「まずはお泊り会だね!」
ご機嫌に笑いかけると、ゆのはチャンも笑ってくれた。