つたわってる?(平七)

「七海、これ食うか?」
「うん、食べる」

平士が手にしていたのはおまんじゅう。
私が頷くと、平士は手に持っていたおまんじゅうを私の手に乗せてくれた。

「なぁ、七海」
「なに?」

包みをひらき、まだ少し温かいおまんじゅうにかぶりつく。
もぐもぐと食べる私を見て、平士は嬉しそうに笑った。

「七海は可愛いな」
「・・・それはない。平士の目がちょっとおかしい。ううん、大分おかしい」
「んー、そんな事ないと思うぞー?
七海は可愛い可愛い」

平士は子どもをあやすみたいに私の頭をなでまわす。
私と平士の髪が似てるといって、出会った頃から妹みたいだと楽しげに話していた。

「・・・平士は食べないの?」
「あ、忘れてたっ!」

平士の優しげな瞳が恥ずかしくて、私は話題をそらす。
思い出したかのように平士は手に持っていたおまんじゅうを食べはじめる。

「ん、うまいな!これ!!さすが暁人!」
「これ、宿吏さんがつくったの?」
「そうそう!3時のおやつだな」
「あとで感想言いに行かないと・・・」
「ああ、そうだな。暁人も喜ぶぞ、きっと」
「・・・」

平士は私と宿吏さんの間に何があったかは知らない。
だけど、聞かないでくれる優しさに私は甘えている。
平士は優しい。

「平士はやさしい」
「ん?そうか?」
「うん、やさしい」
「そりゃ、七海には特別優しくしたいって思ってるからなー」
「?どうして?」
「だって俺、七海のこと大好きだからな!」
「-っ」

平士は甘い蜜みたい。
私をいっぱい甘やかす。
好きっていっぱい伝えてくれる。

「平士、」

食べかけのおまんじゅうを包みごと膝の上に置く。
平士の左手を取ると、両手できゅっと握った。

「-っ、どうした?」
「・・・つたわる?」
「え」
「私が、平士のこと好きな気持ち・・・つたわる?」

平士の能力は相手に自分の気持ちを伝えること。
だから、平士の気持ちが普通の人以上に伝わってくるっていうことは分かっている。
私も、彼に気持ちをつたえたい

「~っ、」

平士は目の下を少し赤く染めながらも何かに耐えるようにぎゅっと目を閉じた。

「平士・・・?」
「あああ、もう七海が可愛すぎて駄目だっ!!」

私の手をほどいて、平士は両腕でぎゅうっと私を抱き締めた。

「へ、平士・・・っ!!」
「七海、大好きだっ!!」

多分、みんなに伝わってるんじゃないかなと一瞬頭に過ったけど
平士がなんだか嬉しそうだから大人しく平士を抱き締めかえした。

良かったらポチっとお願いします!
  •  (5)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA