きみの歌が聞こえる(空アイ)

歌が聞こえる。
優しい歌声が、聞こえる。

 

 

重い目蓋をこすると、思い切り伸びをした。
気付いたら眠っていたようだ。
机の上に広がる本の山。書類の束。
自分の下にあったものにはうっかりよだれが垂れていた。
ああ、いけない。大事な書類・・・ではないからまぁいいか。
日差しが差し込む部屋のなか、ぼくは一人だった。

(歌が、きこえた気がしたんだ・・・)

それは夢だということも分かっている。
ただ、幸福な夢だった。

 

 

アイネに会いたい。
ぼくが必死になるのは、アイネを取り戻したいからだ。
世界が望むのは、兵器としての彼女。
けれど、ぼくが望むのは歌姫の・・・愛音だ。
アイネの声をもっともっと聞きたいんだ。

アイネがぼくを守ってくれた二千年の間。
どんな気持ちでいたんだろうとたまに想像することがあるんだ。
ずっと会いたいと願っていた相手。
眠り続けるぼくをみて、アイネは少しでも幸福を感じたんだろうか。
・・・いや、幸福なんて言葉じゃないな。
だってぼくとアイネはまだ、何も始まっていなかったんだ。
ぼくはまだ、彼女を知らない。
歌がとても上手で、ただの女の子と変わらない・・・ぼくの好きな人だということくらいしか。

 

「アイネ、まっててね」

 

今日も彼女に会うために頑張ろう。
次に会うときは、きっと幼いぼくじゃなくてきっとアイネが微笑んでくれるような・・・いい男になっているはずだから。

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