赤と青(宗次×琴子)

人間と鬼を見た目で区別するのはとても難しい。
力が強い鬼ほど、美しい容姿をしているけれどすぐ判断なんてつかない。
でも、人間と鬼で全く違う点がある。
それは血の色だ。

「嶽屋さんの血も青いんでしょうね」
「はぁ?何を突然・・・」

図書館で調べ物をしていると、嶽屋さんとばったり出会った。
パートナーを組んだ頃は、会えば口げんかばかりしていたけれど
想いが通じ合ってからは嶽屋さんは優しくなった。
・・・いや、以前から遠まわしに優しかったけど最近は直球で優しくなった気がしてる。今日だって私が抱えていた本の山を何も言わないで持ってくれた。
ありがとう、とお礼をいうと嶽屋さんはそっぽを向いて小さく頷いた。
その頬は、赤く染まっていた。
そう・・・鬼の血は青いのに、なぜか赤く染まる。

「だって嶽屋さんの頬、赤く染まるんですもの」
「・・・そんなに赤くなんてなってない」
「そうでしょうか?割とすぐ・・・」
「なってないっ!」

そういいながらも嶽屋さんの頬は再び赤く染まった。
その頬に手を伸ばし、触れてみると心なしか熱い。

「・・・琴子!」
「え?」

触れていた手をぎゅっと握り、そのままぐいっと距離をつめられる。
突然のことで驚くと、漏れた意味のない言葉さえ飲み込まされた。
唇が重なり、吐息さえも奪われそうだ。

「・・・んっ、」

口付けの音が耳に届く。
それだけでも恥ずかしいのに、ここは図書館。
他の生徒が来る可能性だってあるのに、嶽屋さんは口付けをやめない。
舌を絡め、軽く吸われたところでようやく解放された。

「・・・嶽屋さん」
「あんただって赤くなっただろ」
「そういうことを言ってるんじゃ」

嶽屋さんが慈しむような瞳で、私の頬の体温を確かめるように優しくなでた。
そんな顔をされたらもう叱れない・・・
嶽屋さんの手に私の手を重ねると、手もさっきより熱い気がした。その手を自分の口へ運ぶと、周囲に誰もいないのをこっそり確認してから手首に唇をつけた。

「-っ!?」

嶽屋さんが息を飲んだ。
手首をきつく吸い上げる。それはいつも、嶽屋さんが私にするのを思い出してのことだ。もうそろそろ良いだろうか、と想い唇を離すがうっすら赤くなったそこはあっというまに元の肌色になってしまった。

「・・・あら?」
「何をしようとしてるんだ」
「それは・・・その、いつも嶽屋さんが私につけるようなものを・・・と」
「~っ、」

嶽屋さんは私が何をしたかったかようやく理解すると、私から自分の手を奪った。

「そ、そんなこと!なんでここで!?」
「だってあれはうっ血してる状態だと聞いたことがあったので・・・
もしかしたら嶽屋さんに痕をつければ青いんじゃないか、と」

でも一瞬赤くなっただけだった。
鬼の身体は不思議なものだ、と頷くと今度は嶽屋さんが私の手に自分の手を重ねてきた。

「・・・なら今夜、確認してみればいいんじゃないか」
「え?」
「だから今夜・・・!」

何度か肌を重ねた相手。
最愛の恋人が赤くなりながら夜のお誘いをしてくれているというのに、私は可愛いなんて思ってしまった。

「笑うなよ、琴子・・・」
「ふふ、すいません。嶽屋さんが可愛くて」
「・・・なんだ、それ」
「そうですね・・・
嶽屋さんさえ良ければ・・・紅茶でもいかがですか?」

直球の言葉に素直に頷くのはまだ恥ずかしい。
私は照れを誤魔化すようにそんな提案をする。
嶽屋さんも安心したように頷いた。

 

 

 

 

翌日、嶽屋さんの身体に残った痕が赤なのか青なのか・・・
それは私だけの秘密です。

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