高校を卒業した足で、有真さんに会いに行ったあの日。
互いの想いを言葉にしたあの日から、私と有真さんは恋人同士になった。
・・・その前から恋人同士のようなものだったけど、高校を卒業するまでは、と手すら繋いでくれなかった。
「ふふ」
「どうした?リンカ」
有真さんの久しぶりのお休み。
私たちは手を繋いで街を歩いていた。
「こうやって手を繋いでデートするの、夢だったんです」
「そうか」
絡めあった指が、きゅっと握られる。
学校で友達が彼氏とのデートの話をするたび羨ましかった。
私も手を繋いでデートしたいなぁって思っていたから念願が叶って私はとても幸せ。
「俺もこうやって歩けて幸せだ」
「私たち、同じ気持ちなんですね」
「ああ、そうだ」
ショウウインドウに映る自分たちをちらりと見て、また笑みが零れた。
街に買い物に来たのは二人で暮らす新居のためのものだ。
結婚しようと言ってくれた日から、私たちはそれに向けて準備を進めていた。
私の両親に挨拶に来たときはさすがに緊張したらしく、表情が強張っていたけれど
お母さんには好きな人がいる・・・それが有真さんだということも話していたから、お母さんが助け舟を出してくれたりして、挨拶は滞りなく済んだ。
私も先週、有真さんのご両親にご挨拶にいった。
有真さんのお母さんの目元が、どこか有真さんに似ていた。
それを見て、私は少し安心して話すことが出来た。
互いの両親からは反対されることなく、私たちは結婚を前提とした同棲をスタートした。
新居は改めて探そうと話していたので、私は有真さんの一人暮らしの家に住むことになった。
一人で住むには少し広い部屋だったけど、二人ならちょうど良い。
それを有真さんに話すと、私と一緒に暮らすことを見越してここを借りていたとしれっと言われて赤面したのはつい最近だ。
「次のお休みはウェディングドレス、見に行きましょうね」
「ああ、楽しみだな」
不意にナラカさんのことを思い出す。
ナラカさんならウェディングドレスも作っちゃいそうだな、と考えると急に懐かしさが湧いてくる。
「どうした?」
「え?」
「少し寂しそうな顔をしてるぞ」
「有真さんは私のこと、よく見ててくれますね。
・・・ナラカさんならウェディングドレスも作っちゃいそうだなーって考えてました」
「ああ、あいつなら出来そうだな」
ナラカさんと生きていた時代が違ったのかもしれない。
それに生活していた場所も違ったのかもしれない。
だけど、きっと・・・ナラカさんは今も可愛い服をどこかで作っているんじゃないかっておもう。
「有真さん」
つないでいる有真さんの手の体温を愛おしく思う。
触れ合うことで、もう過去は見えないけど気持ちは伝わってくる。
「今日の晩御飯、何食べたいですか?」
「リンカ」
「・・・っ、そういうことを真顔で言わないでください」
「冗談だ」
「わかってますよ」
「そうだな、ハンバーグが食べたい」
「ふふ、分かりました」
幸せってきっとこういう事をいうのだろう。
そんなことを思いながら、私はもう一度、手をきゅっと握った。