俺の太陽(ヨウ×サンズ)

ネタバレと捏造です。

 

退屈そうに窓の外を見つめる彼女を俺も退屈そうに眺めた。
黒くて長い髪がサラサラで、光にあたってキラキラと輝いて見えるのに。
どうしてあんなに退屈そうにしているのだろう。

「サンちゃん、デートしようぜー」
「は?なにいってんの」

なんて声をかければ、全く相手にされず一刀両断。
コンビニで新作のお菓子を見つけては買い、それをサンちゃんの口に放り込み続けても退屈そうな表情は変わらない。
女子のグループに入ることもなく、ただ一人でいる姿は風に吹かれればどこかへいってしまいそうだった。

(笑った顔、見てみたいなぁ)

ただそれだけ。
俺の興味本位。
サンちゃんのためとかそういうんじゃない。
ただ、笑ったらどうなるんだろうなっていう好奇心だった。

「サンちゃん、サンちゃん。この曲すっげー良いんだよ、聞いてみてよ」
「・・・ヨウは飽きないね」

俺が絡むことに諦めにも似た表情を浮かべて、ヘッドホンを俺から受け取る。
目を閉じて、流れる音に耳を傾けているサンちゃん。
俺はその様子をひじをついて眺める。
今日もダメかなぁー
時間的には、俺のお気に入りの曲が流れるころだった。
閉じていたサンちゃんの目が見開かれた。

「サ・・・サンちゃん?」

そして、サンちゃんの頬に涙がつたう瞬間を俺はただ呆然と見ていた。
人が、心を揺さぶられるのを初めて見た瞬間だった。

 

 

 

 

「ヨウ、私怖いよ」

ステージに立つ前、いつもサンちゃんは不安げな顔をして下を向く。
俺の服の裾を掴んで、俺をどこへも行かせないという意思を見せるくせに俺の表情を見ようとはしない。
俺がどんなカオをしているのか見るのが怖いんだろう?
今回も大丈夫だ、といってくれるか分からないから。
だから俺はサンちゃんの頬を両手で挟んで顔をあげさせる。

「大丈夫だよ、サンちゃん。俺が隣にいる」
「・・・うん」

濡れた瞳に俺が映りこんだのを見て、安堵する。
ああ、俺はサンちゃんに必要とされている。
サンちゃんの隣にいて、いいんだ。
そう何度も安心する。
ステージが始まってしまえば不安なんてどこかへ吹っ飛んだように歌いだす。
キラキラと輝くサンちゃんを見ていられるこの場所は、俺の特等席だったんだ。

 

 

NEVAEH学園でサンちゃんを見つけた時、心臓がぎゅっと痛くなった。
俺が、サンちゃんをここまで連れてきてしまったんだ。
彼女は俺たちの太陽みたいな存在で。
才能に溢れてキラキラ輝いているのに、
手を離す決意をしたはずなのに、
本当はいつまでも一緒にいたいなんて子どもじみたことを考えていたから。
俺が、サンちゃんを堕としてしまったんだ
サンちゃんは何も知らない。
知らないから、今までと変わらない。
俺には聞こえない音楽を聴いて、嬉しそうなカオをするサンちゃん。
そのカオをいつまでも見ていたい。
誰よりも近くで、あんたを見ていたいと思っていた。
サンちゃんが俺に縋ることが心地よかった。
家族みたいだと笑ったこともあった。
弟のようだ、妹のようだと言い合ったこともあった。
だけど、そんな言葉じゃ言い表せないんだ。

 

「サンちゃん、俺サンちゃんに追いつくから」

林檎をかじる。
消えてしまったサンちゃんに追いつきたい。
もう一度、もう一度サンちゃんに・・・

 

 

 

 

「・・・-っ、・・・・ウ!!」

馬鹿みたいに俺を呼ぶ声が、俺の意識を引きずり戻した。

「・・・サ・・・ンちゃん?」

何度か瞬きをして、ようやく焦点があう。
目の前には、俺の太陽がいた。

「ヨウ!!」

涙が、こぼれた。
そのすぐあと、サンちゃんが思い切り俺に抱きついてきた。

「サンちゃん、いたいいたい」
「馬鹿!馬鹿!!」

体中がとんでもなく痛い。
ぼんやり見えたサンちゃんの腕やカオにだって包帯やらそういうものが見えた。
意識を取り戻したサンちゃんは、きっとずっと俺の傍にいてくれたんだろう。

「サンちゃん・・・サンちゃん、」

左手は管につながれていてうまく動かない。
右手だって力はそこまで入らない。
でも、俺は精一杯の力でサンちゃんを抱き締め返した。

「会いたかったよ、サンちゃん」
「・・・うん」

初めてだきしめたサンちゃんは温かかった。
ぬくもりをかみしめながら、俺はようやく涙を零した。

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