それがきっと恋のはじまり。(俺様ティーチャー/早坂×真冬)

「早坂くんは恋、したことある?」

以前、そんな事を聞いた。
今までの生活で、私は恋なんて無縁だった。
初恋の相手といえば、鷹臣くんだけど、今も変わらず好きかと言われると頷けるけれど
それが恋かと聞かれると首をかしげてしまう。

私ってまともに恋をした事がないんじゃ・・・?

放課後、風紀部の部室に行ったが、教室に忘れ物をした事を思い出し
私は一人で教室へと戻った。
その道すがら、女子生徒が男子生徒に告白している現場を見かけてしまった。
頬を赤らめて、想いを伝えるその子はとてもキラキラしていた。

私のまわりではそういうものは無縁だ。
強いて言うなら、あれだ。
「早坂くんはウサちゃんマンが好きー」
声に出してみたが、なんだか腑に落ちない。
ウマちゃんマンや夏男に向ける笑顔はあんなにキラキラしているのに、
私に向ける表情にそういうものはない。
どちらの正体も私だと分かったら、早坂くんはどうするのだろうか。
キラキラした笑顔は見れなくなるのだろうか。
それとも、私にキラキラした笑顔を向けてくれるのだろうか。

そんな事を考えていたら、教室に立ちつくしてしまっていた。
鷹臣くんにはいっぱい、いろんな女性がいる。
それを聞いても、サイテーだな、位にしか思わないけれど。
早坂くんがそうだったら、と考えたら苦しくなる。
どうして?
一番の友達でいたいから?
私が欲しいのはたくさんの友達じゃなくて、
たった一人の友情だから?

「黒崎」
コツン、と頭を叩かれて振り返ると早坂くんが立っていた。
「遅いから迎えに来た。何してんだよ」
至極当然のようにそういう彼の言葉は、時々私の心を鷲掴む。
今まで、女の子扱いされてこなかったから早坂くんのそういう行為が嬉しくてしょうがない。
二人で連れだって、部室へと向かう。
「さっきさー、告白現場見ちゃった」
「はぁ?それで遅かったのか」
「いや、そういうわけじゃないんだけど」
「ふーん」
「早坂くんは彼女とか欲しくないの?」
横顔を見れば、いつもの表情。
キラキラした笑顔はない。
早坂くんの隣を誰かに奪われる日は来るのかな。
キラキラした女の子とか。
出来れば渡したくないな。
「今はそんな事考えてないな」
「・・・だよね」
その言葉に少し安堵する。
「お前といる方がきっと、悪くねーと思うから」
思わぬ言葉が飛んできて、思わず早坂くんの顔を見上げた。
耳まで赤くなった彼が、やっぱりなんだか私の心を鷲掴んできて。
「なんだよ!」
あまりに嬉しくて、いつものように抱きついた。

ああ、この距離を誰にも渡したくないなって思い始めた自分の心は今まで知らない世界だった。

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