それを恋って言うんです。(俺様ティーチャー/桶川→真冬)

「桶川さん!聞いてますか」
後藤が少し大きめの声を出して話しかけても、なんだか上の空。
まぁ、おおよそ察しがつくんだけれど。

「桶川さん、最近ある人物の事を考えてませんか?」
「ばっ!別に俺はモールスの事なんかっ・・・!」
真っ赤な顔をして、桶川さんが俺に反論する。
ほら、あたり。
桶川さんはどうやら恋をしたようだ。
おそらく初恋。
高校三年生にもなって初恋だなんてピュアにもほどがある。
威厳のある番長のくせに、その姿は小学生より遅れている。
「たとえば、その人が自分以外の人と楽しそうにしてるのとか想像してください。
どんな気分ですか?」
後藤が何言ってるの?という顔をしてこっちを見ている。
桶川さんは想像しているらしく、表情が一気に暗くなった。
「逆に、その人が自分と一緒にいて楽しそうにしているのを想像してください」
今度は一気に耳まで赤くなった。どんな事想像してるんだか・・・
「嬉しいでしょ?桶川さん」
「・・・、なんだよ。それがなんだって言うんだよ」
「なんだと思います?」
ニコリとほほ笑むと桶川さんが嫌そうに顔をしかめた。
「内緒です。」
「は?」

「よう、モールス」
「番長!」
たまたまコンビニを出たところでモールスに出くわした。
「アイス、食うか?」
「え、いいんですか!」
以前もそんな会話をした事を思い出した。
あの時も同じようにモールスは嬉しそうに笑っていた。
こないだ、河内に問われた事を思い出す。
モールスが自分以外の誰かと一緒に・・・
いや、いつも早坂とか一緒にいるだろ。
それを嫌とは・・・
まぁ、早坂が余計な事を言ったりしなければ。
でも、できれば一緒にいたい・・・と思っている。
それが何なのか、分からないんだ。
「モールス」
「なんですか?」
シャリ、とアイスを齧る音が聞こえる。
「お前は誰かの事考えて、そいつが自分以外といるのが嫌だったり、
自分がそいつと一緒にいたいとか・・・こういうのどう思う?」
「え、えーと?」
一気にまくしたてるように話すと、モールスは少し考えてからこう言った。
「それはきっと、恋ですね!(確か前に雑誌で読んだ!)」
「こ、こいっ!??」
「そうですね」
また、シャリとアイスを齧る。
その横顔に思わず見とれた。

これが恋。
恋?
恋ってあの、男と女がお花畑で手を繋いで遊んだり、とかの恋?

「番長もアイス食べないと溶けちゃいますよ?」
は、として手を見ると少し溶け始めたアイス。
急いで齧るとモールスが齧ったときのようにシャリ、という。
「うまいな」
「ですねー」
この時間が少しでも長く続けばいいと願う事が、恋なんだな。

良かったらポチっとお願いします!
  •  (2)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA