お菓子よりキミが欲しい(アキアイ)

俺が子どもの頃は、この季節が来ても今みたいに賑わっていなかった気がする。
学校の帰り道、すっかりハロウィン一色に装飾された街を見てそんなことを思っていた。

「どうかした?アキちゃん」
「んー、ハロウィンだなぁって」
「そうだね、いっぱい可愛いものあってウキウキしちゃうね」

隣を歩く可愛い恋人は、お気に入りのお店がハロウィン仕様になっていることに顔をほころばせていた。
うーん。可愛い。

「ねえ、アイちゃん。今日家に寄っていってもいい?」
「うん、いいよ」

警戒心なく、俺を家にあげることにしちゃうアイちゃん。
他人との距離を露骨にとる彼女にとって、俺はようやく安全圏に入ったんだ。
小さい頃とは違って、アイちゃんの手だって身体だって、俺より小さい。
少しずつ、それを理解していってもらう。それが今の俺の目標だ。

 

 

 

 

家につき、リビングのソファに座る。
部屋に上がろうといってくれたけど、まだ誰もいないアイちゃんの家で、アイちゃんの部屋で二人きりはちょっと刺激が強すぎるから辞退させて頂いた。
ダイニングキッチンだからアイちゃんがお茶の用意をしてくれてるのが見えるからちょっと幸せ。
あー、将来こうやってアイちゃんが俺のためにご飯とかつくるのを見て幸せ感じるんだろうな。

「アーイちゃん」
「きゃっ、どうしたの?」

お茶を用意するアイちゃんを後ろから抱きしめる。
ぴくりと跳ねる身体はやはり小さい。

「今日はハロウィンだね」
「うん、そうだね。だから・・・」
「アイちゃん、トリックオアトリート」

耳元でささやき、アイちゃんの耳たぶを軽く噛む。
頬があっという間に真っ赤になる。ああ、やばい。俺の馬鹿。
幸せ感じて、ちょっと触りたくなってしまった。
ちょっとじゃ、我慢できなくなりそう

「はい、アキちゃん!」

抱きしめる腕から逃げると、アイちゃんは俺の口に何かを無理やりねじ込んだ。
もぐもぐと食べると、カボチャ味のマフィンだ。

「・・・えと、今日ハロウィンだから一緒に食べようと思って作ってあったの」
「あー・・・」

真っ赤な顔で視線をさ迷わせているアイちゃんを見ながら、口の中のものを咀嚼する。
カボチャ味って美味しいから結構好き。
俺と食べるために用意していてくれたっていうことも凄く嬉しい。ごくん、と飲み込むと用意していた紅茶をそっと手渡してくれた。

「いたずら、出来ないね」
「・・・っ、アキちゃん」

そこまで考えてなかったらしいアイちゃんが可愛くて、吹っ飛びそうだった理性をなんとかつなぎ止められた。
紅茶を一口飲むと、なんだかおかしくて笑みが漏れた。

「俺、アイちゃんには敵わない気がする」
「え?」
「ねぇ、アイちゃん。
俺にも言ってよ、トリックオアトリートって」
「ト、トリックオアトリート」
「うん、はい」

促されるがまま言葉にしたアイちゃんに、俺はポケットにしのばせていたものを手渡した。

「アキちゃん、これ!」
「開けてみて」

小さな包みに入っているのは、アイちゃんの好きな雑貨屋さんのハロウィン限定ストラップ。
欲しそうに見つめていた姿が可愛くて、アイちゃんの目を盗んで買っておいたのだ。

「ありがとう、アキちゃん!」
「あー、でもそれお菓子じゃないから俺に悪戯してもいいんだよ?」

にこりと笑うと、アイちゃんは少し悩んで俺の頬に手を伸ばした。
軽くつままれ、これが悪戯か・・・アイちゃんの悪戯はやっぱり子どもみたいで可愛い。
完全に油断していると、唇にやわらかいものが触れた。
それは一瞬のことだったけど、目の前の恋人が真っ赤な顔をしているから勘違いじゃない。

「アイちゃん・・・!」
「い、いたずらだから!驚かないと悪戯にならないでしょう?」

アイちゃんからキスされるなんて予想していなかったから喜びと驚きが混じってぐちゃぐちゃだ。
たまらなくなって、思わずしゃがみこむ。

「え?アキちゃん!?どうしたの?」

突然しゃがみこんだ俺にびっくりしたらしく、アイちゃんも俺の前にしゃがむ。
我慢できなくなって、アイちゃんをぎゅっと抱きしめた。
ああ、もう。

「アイちゃん、大好き」

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