はたらくお父さんはかっこいい(ヴィルラン+子ども)

※オリジナルキャラとして二人の子どもが出てきます。苦手なかたは閲覧をご遠慮ください※

 

 

 

「ロニ、ヴィオレッタ。
お父さんにお弁当届けにいかない?」

あと一時間もすれば昼食の時間というとき。
慌しく仕事に向かったヴィルヘルムはいつものお弁当を忘れて出かけてしまった。

「いくー!」
「ヴィルヘルム、べんとーわすれたの?しょーがないなぁ」

今日は訓練だっていっていたからいつもの場所にいるだろう。
出かける支度を済ませると、子どもたちに靴を履かせて家を出る。
お弁当はロニとヴィオレッタ、それぞれのリュックに分けていれたので私の両手は二人の子ども達の手でふさがる。
ロニは私の手をいつもぎゅっと握るけど、ヴィオレッタはそっと繋ぐ。

「お父さん、がんばっておしごとしてるかなぁ」
「ふふ、そうね。きっとがんばってると思うよ」
「そっかぁ」

ヴィオレッタは嬉しそうに微笑んだ。
私も小さい頃、お父さんが働く姿を見てかっこいいと感動したことを思い出す。
お父さんの背中って大きいんだよね。
今は遠くなった昔を思い出し、私はヴィオレッタに微笑み返した。

 

 

いつもの場所に着き、見回りをしている人を捕まえてヴィルヘルムの場所を尋ねる。

「ヴィルヘルムさんならちょうど今、模擬戦の途中ですよ」
「あ、そうなんですか」
「もうすぐ終わると思うんで、どうぞあちらから」
「ありがとうございます」

教えてもらった道を道なりに進むと開けた場所に出る。

「あ、ヴィルヘルム!」

ロニが声を上げて指をさした。
その指差す方に、ヴィルヘルムがいた。

「・・・!」

赤い髪が、揺れていた。
ヴィルヘルムが真剣な瞳で、相手を見据える。
振り上げる大剣はまるで重さなんてないように軽やかに動き、相手に襲い掛かる。
それをなんとか退ける細身の剣の使い手は、私と彼の級友アサカだった。
しばらく二人の姿に見とれるように立ち尽くす。
するとヴィオレッタが私の右手を強く握った。

「お母さん?」
「どうかした?ヴィオレッタ」
「お父さん、かっこいいね」
「・・・うん、そうだね。かっこいいね」

夫婦になってもう随分経つのに、私は今でもヴィルヘルムに恋をしてる。

 

「ラン!」

模擬戦が終わると、ヴィルヘルムが私たちに気づいて駆け寄ってくる。
来るなんて言ってなかったのに、すぐ私たちを見つけてくれたことが嬉しい。
ロニとヴィオレッタは私の手を離し、ヴィルヘルムに駆け寄ると足元に抱きついた。

「父ちゃんすっげー!父ちゃん、強いんだな!!」
「お父さん、かっこいー!」
「何だ、見てたのか。そうだよ、父ちゃん強いんだぞ」

ヴィルへルムはご機嫌らしく、二人を抱きかかえると私の元へやってきた。

「ヴィルヘルム、お弁当忘れてたから」
「あ、そういえばそうだった。悪いな」
「あのねあのね、お父さん」
「ん?」

ヴィオレッタが内緒話をするようにヴィルヘルムの耳に顔を寄せる。
私に聞こえない声の大きさでヴィオレッタが何かいうと、ヴィルヘルムは少しだけ頬を赤らめた。

「その、今日はなるべく早く帰るな」
「?うん、分かった」

子ども達を地面に降ろし、お弁当を受け取るとそれぞれの頭をくしゃくしゃと撫でた。

「帰り道、気をつけるんだぞ。ちゃんと母ちゃんの手、ぎゅっと握るんだぞ」
「うん、わかった!」
「父ちゃんもおしごと、がんばれよ!」
「ああ、がんばるよ」

楽しそうに笑う3人を見つめて、ああ幸せだなって改めて思った。

 

 

 

「ああしていると、ヴィルヘルムもすっかりお父さんですね」
「ん?」

3人が帰るのを見送って戻るとアサカが笑った。

「すごく微笑ましかったです」
「・・・そうか」

頭をがしがしと掻いてアサカから目をそらす。
昔からの知り合いに見られるのは少し気恥ずかしい。
でも、アサカにはヴィオレッタも懐いているしな・・・

「ヴィオレッタがアサカに会いたいっていってたぞ、そういえば」
「僕なんか目に入らないくらいお父さんの雄姿に夢中だったみたいですね」

何をいっても墓穴掘るみたいだったから俺は黙ってアサカの隣を歩いた。

 

 

 

家に着くとちょうどお昼の時間だ。
ロニはヴィルヘルムの姿がよほどかっこよく見えたのか、「父ちゃんかっこいい!」と帰ってからもはしゃいでいた。
普段、言い聞かせてもお父さんと呼ばないロニが今は父ちゃん父ちゃんと呼んでいるのがその証拠だ。
ヴィオレッタはキッチンに立つ私の隣でご機嫌そうに鼻歌を歌っていた。

「ねえ、ヴィオレッタ」
「なぁに?」
「さっきお父さんに何話してたの?」
「ふふふ、きになる?」
「うん、気になる」

ヴィオレッタはにっこりと笑うと私の手を引っ張った。
耳を貸せということだろう。
私はかがむとヴィオレッタはさっきヴィルヘルムにしたように顔を寄せた。

「お母さんがお父さんのこと、かっこいいって言ってたって」
「・・・っ」
「そしたらお父さん、すごいうれしそうだった!」
「・・・もう」

子どもにからかわれる日が来るなんて。
恥ずかしい気持ちになりながらご機嫌なヴィオレッタの頭をなでてやった。

 

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