浮気騒動(ヴィルラン+子ども)

※オリジナルキャラとして二人の子どもが出てきます。苦手なかたは閲覧をご遠慮ください※

 

 

 

今日は、母ちゃんにたのまれたおつかいをするためにヴィオレッタと一緒に街にきた。
そこはいつも母ちゃんと一緒にいくところだし、ヴィオレッタは女だからオレがまもってやるんだ。
ぎゅっと手をにぎると隣にいるヴィオレッタはうれしそうにわらった。

「ヴィオレッタ、オレの手をはなすなよ!」
「うん、わかった!」

母ちゃんにたのまれた野菜を買いおわって、左手はヴィオレッタの手をつよくにぎったままだった。

「あ、お父さん!」
「ばか、父ちゃんはしごとだろ」
「だってあれ」

ヴィオレッタが指さした方をみると、確かに父ちゃんだ。

「おとうさ・・・」
「まて、ヴィオレッタ!!」

父ちゃんの隣には見知らぬひとが立っていた。
それは母ちゃんには負けるけど、すごいきれいな人だった。
おどろきのあまりヴィオレッタの手をつよく握りすぎたのか、ヴィオレッタがオレをじっと見つめる。

「父ちゃん・・・まさか、うわきってやつを?」
「ロニ?」
「あと、つけようぜ!」
「・・・ロニがひとり言いってるあいだにお父さんいなくなっちゃったよ」
「え!?」

父ちゃんがいたほうを見ると、もうそこにはだれもいなかった。
もしかして、父ちゃんは母ちゃんいがいの人とどこかへいっちゃうんじゃ・・・

「ヴィオレッタ、はやく家にかえるぞ!」
「うん、お母さん待ってるもんね」

のほほんとしてるヴィオレッタの手を行きよりもつよく引っ張ってオレは家へいそいだ。

 

 

 

 

玄関のドアが開く音がして、子どもたちが駆けてくる足音がする。

「おかえりなさい、ふたりとも。
ちゃんと買えた?」
「うん、ただいまー。お母さん」
「か、母ちゃん!」
「ロニ、ただいまは?」
「それどころじゃないんだよ!」

ヴィオレッタはきちんとおつかいが出来たことを褒めてほしそうにニコニコしているが、ロニは切羽詰った顔をしている。
不思議に思いながら、私は膝をついて二人の目の高さにあわせた。

「どうしたの?ロニ」
「か、母ちゃんは父ちゃんがいちばん好きなんだよな?」
「え、う・・・うん。そうだよ」

いつもヴィルヘルムのことを父ちゃんって呼ばないロニが、必死な顔をして言った台詞に戸惑いながら頷く。
すると、ロニは悲しそうな顔をしてお使いで買ってきてもらった袋がその手からすり抜けた。
ごとん、と音がして中に入っていたじゃがいもが転がる。

「ロ・・・」
「オレが大きくなったら母ちゃんのこと、お嫁さんにもらうから!
だから泣かないで・・・!」

ぎゅうっと抱きついてきて、私を励ましながらロニが泣いた。
どういうことなのかさっぱり分からないけど、私はロニをそっと抱き締め返す。

「ありがとう、ロニ。
でも、お母さんはお父さんのお嫁さんだからロニとは結婚できないの」
「だって父ちゃんが・・・!」
「ただいまー・・・って何してんだ?」「おかえりなさい、お父さん!」

ドアの方を見ると、ヴィルヘルムが不思議そうに立っていた。
ヴィオレッタは嬉しそうにヴィルヘルムへ駆け寄り、彼の足に抱きついた。

「ただいま、ヴィオレッタ。いい子にしてたか?」
「うん!あのね、今日おつかいに行ったの!」

ぐすぐすと泣きながらロニはキッとヴィルヘルムをにらみつけた。

「母ちゃん以外の女のひとと、デートしてただろう!」
「・・・え?」
「は?お前何言ってんだ?」

私とヴィルヘルムは驚いて思わず見つめ合う。
だって今日、ヴィルヘルムは・・・

「あのね、お父さんがアサカちゃんといっしょにいるの見たの!」
「え?」

今度はロニが驚く番だ。
周囲の空気に構わずヴィオレッタは話しつづける。

「お父さん、今度いつアサカちゃんにあえるの?
ヴィオレッタ、アサカちゃんにあいたい!」「あ・・・ああ。今度アサカに会ったらいっておくな」
「うん!」

そういえば、と思い出す。

「ロニはアサカに会ったこと、ないものね?」
「・・・だれ?」
「お父さんとお母さんの学生時代のお友達よ。
・・・綺麗なんだけど、男の人よ」

鼻水をハンカチでぬぐってやるが、ロニは驚いたまま動かなかった。

 

 

 

 

◇◇

「ふふ、今日のロニには驚いた」
「何事かと思ったぞ」

ベッドのまんなかですやすやと眠る二人の寝顔を見ながらくすくすと笑う。

「私のこと、お嫁さんにもらってくれるんだって、ロニ」
「は?」
「驚いたけど、嬉しかったなぁ」
「いや、ちょっと待て」

息子からそういう風にいってもらえるのはやっぱりお母さんとしては嬉しい。
二人にかかってる掛け布団を直してやると、ヴィルヘルムに手を掴まれた。

「お前は俺の嫁だろ。たとえロニでも渡さねえぞ」
「・・・っ!」

空いてる手で、私の肩を引き寄せ唇にかみつかれる。
寝ているとはいえ、子どもたちの前なのに。
恥ずかしくなってヴィルヘルムの肩を押すと更にキスは深いものに変わる。

「・・・はぁ」

ようやく解放された時にはすっかり息が上がっていた。

「ヴィルヘルムが私を捨てたらもらってくれるって話よ」
「だから俺は・・・!」
「うん、分かってる。私もヴィルヘルムが一番好きよ。
ロニにもそう言ったもの」
「そ、そっか」
「もう・・・」

子どもにまで露骨に妬くんだから大人気ないんだから。
でも、ヴィルヘルムのそういうところも愛おしいと思うんだから重症だ。

「ヴィオレッタに結婚してって言われても、駄目だからね?」
「当たり前だろ、ばーか」

得意げに笑って、私の頭を乱暴に撫でた。

「いつだって俺の一番はラン、お前だからな」

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