幸せ(一深)

一月の腕の中って凄く安心する。
彼の腕のなかにいると、なんだか幸せな夢を見れそうなんていつも思ってしまう。
それは能力があるから、とかではない。
彼が私を愛して、
私が彼を愛しているから。
そんな風に今は思う

 

「一月、どうしたの?」

「ん?何が」

一月が私の手をひく。
街は今日も多くの人で賑わっているし、今日は休日だ。
いつもよりも人が多いから彼が私の手をひくのは分かるんだけど、なんだか今日の一月は・・・

「ご機嫌ね、なんだか」

「そりゃ、大好きな女の子とこうやって手を繋いで歩いてるからね」

「・・・もう」

一月の軽口にも慣れたけど、内心で喜んでいるのはバレているだろう。
彼を盗み見ると、私を見つめていたらしい彼と視線がぶつかった。
ああ、もう・・・
恥ずかしいけれど、嬉しいなんて。
何も言わない代わりに繋いだ手を、強く握った。

 

 

 

 

「何もいらなかったの?」

「ええ」

一月が一生懸命働いてくれたお金だもの。
無駄遣いはしたくない。
日用品を買い足し、後はお店をぶらぶらと見て帰ってきた。
何かを買ってもらうより、一月と一緒に出掛けたことの方が私には嬉しい。

「じゃあ、今日は俺が夕食作ろうか?」

「どうしたの、急に」

「んー、今日はさ、深琴をめちゃくちゃ甘やかしたいんだよね」

ふ、と後ろから抱きすくめられる。
触れ方は酷く優しいのに、伝わる温度は私を落ち着かせない。
夜、眠るときに抱き締められるとあんなに落ち着くのにどうしてこういう時は鼓動がうるさいんだろう。

「・・・一月はいつだって私を甘やかすじゃない」

「好きな女の子には優しくしたいんだよ」

耳をぺろりと舐められ、肌が粟立つ。
あっという間に私たちの間には甘ったるい空気が流れる。
回された一月の手を握ると、一月が微かに笑う気配を感じた。

「本当に、深琴は可愛い」

「・・・なによ、もう」

恥ずかしさを誤魔化すように口を開いたのに、続きの言葉は一月の唇によって塞がれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、深琴」

「ん・・・」

今、何時なんだろう。
私の頭を優しくなでる一月の手が心地よくてなかなか目を開けない。

「お誕生日、おめでとう」

「え・・・?」

ふと、優しい香りに誘われて重たい目蓋を開いた。

「・・・っ、一月これ」

目を開いた先には真っ赤な薔薇が2本あった。

「散々伝えてるけど、俺は深琴が好きだよ」

薔薇に手を伸ばし、彼から受け取る。
鮮やかな赤に目を奪われる。

「ありがとう、一月」

「その顔が見たかった。うん、凄く可愛い」

愛おしいものを見つめるような瞳で、一月が笑う。
それだけで、鼓動が高鳴る。
私、改めて思うけど一月のこと本当に好きなんだな。

「一月、あなたのことが大好きよ」

「・・・っ、深琴の誕生日なのに俺を喜ばせていいのかな」

「ふふ、いいんじゃないかしら」

照れたように頬を染める一月に、幸せを感じる。
来年もこうして、彼の隣にいれますように。

 

 

-赤い薔薇は、あなたを愛しています

 

Happy BirthDay Mikoto

良かったらポチっとお願いします!
  •  (9)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA