「記念写真・・・ですか?」
「そうそう!よく考えたらさ、俺たちそういうの撮ったことなかったよね!」
定例のミーティングが終わった後、ユンが「提案がありまーす!」と右手を高らかに上げた。
確かにいつも業務に追われる日々。
チームで動くこともあれば、パートナーと動くこともある。
そしてデスクワークもある。
それでも時間が合うときは一緒に食事もとるし、買い物に行くこともある。
天遣塔で過ごす日々は、穏やかとはいえないけれど日々充実している。
「良いかもしれないですね」
「やった!フウちゃんが乗り気ならいいよね!」
「僕はフウちゃんの隣がいいです、うふふ」
「ちょ、なに勝手にフウちゃんの隣キープしようとしてんだよ!
俺もフウちゃんの隣が良い!!」
「おまえの隣にフウを並ばせたら何するか分からないだろ。
しゃべるな変態」
「ひど!!」
いつも通りのユンとレイラの言い合いを見守りながら、傍にいるチカイやナナさんの様子を伺う。
「たまには良いか」
「さっすが、理解ある~★」
「ですです!うふふ、楽しみですね」
「確か備品にカメラがあったはずっす。
これから撮っちゃうっすか?」
「お、気が利くねー!じゃあ早速撮っちゃおうよ!」
そこから慌しく外に移動する。
屋上も良いよね!!と盛り上がるユンを殺気籠もった目で睨むレイラの気持ちを汲んで、天遣塔の前で撮影することに決まった。
制服を払い、少しだけ綺麗に整える。
「じゃあ、みんな並んでくださいっす~」
「はいはい!俺フウちゃんのとーなりー!」
「やめてください、フウちゃんに変態が近づくのは」
「え?!」
「じゃあ、こっちは俺がもーらおう!きゃはは★」
ユンと私の間にミクトが割って入るともう片方の空いているところにチカイが来る。
「え、ずるい!俺もフウちゃんの隣が」
「いい加減にしろ、ユン。お前は俺の隣だ」
「わーお、特等席ー」
ようやく並び終わると、ナチがにこりと笑った。
スタンドの調整も終え、レンズを覗く。
「じゃあ行くっすー!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「え?」
「ナチは入らないんですか?」
「自分はシャッター押さなきゃいけないっす」
記念撮影なのに、ナチが映らないなんて。
そんな事駄目だ。
「これはチームの記念撮影ですよ。ナチも入るべきです」
「そうだよ!それ、タイマーできるやつでしょ?入ろうよ!」
「ですです!みんなで撮りましょう!」
「いいから早く来いよ・・・チームなんだから」
「うん、おいでよ~!今ならフウちゃんの隣譲ってあげる★」
「・・・っ、みなさん」
じれったくて駆け寄るとナチの手を取る。
「ほら、行きましょう!」
「分かったっす!今、タイマーセットするので、みんな待っててください!」
ナチは少し泣きそうな顔をして、タイマーをセットすると私の手を強く握って、みんなの下へ駆け出した。
「早く早く!」
私たちが位置についたのとほぼ同時ぐらいにシャッターの音がした。
「ちゃんと撮れてるかみてみよーよ!」
ユンが駆け出して、カメラをいじりながら戻ってくる。
「お、よくとれてるじゃ・・・」
「どうかしました?」
「・・・なんで二人とも手つないだまま撮ってるんだよ!ずるい!!」
「え!?」
言われるまで今の今までナチと手をつないだ状態だということに気付かなかった。
慌てて手を離そうとすると、ナチが強く手を握るので、驚いてナチの顔をみるとうっすら頬が赤かった。
それにつられるように私も頬が熱くなる。
「もう一回!もう一回撮ろう!
今度は俺と手、つなごうよ!フウちゃん!」
「ユンが繋ぐくらいなら俺が繋ぐ」
「ぼ、僕だって繋ぎたいです!」
「うんうん、みんなフウちゃんと手を繋ぎたいよね~★俺もつなぎたいし!」
「こら、お前たち!」
いつものように、いつもの場所で、私たちは生きていく。
私たちが、チームになって1年目の昼下がりはいつもと変わらないくらい騒がしくて、優しかった。