10:00 ようやく起床

10:00

 

腕のなかで小さな寝息を立てているぬくもりに安堵する。
ベッドの近くに置いてある時計に目をやるともうすぐ長針がてっぺんを指すところだ。
そろそろ起こさないと後で怒られる気がするので、ランの頬を軽くつねってみる。

「ラン、そろそろ起きろ」

「んっ・・・いたい、ヴィルヘルム」

「目、さめたか?」

頬から手を離すと、ランは目を数回擦ってから俺の方を振り返った。

「ん、おはよ」

「おう、おはよ」

まだ少しだけ眠そうな目をしているが、ようやくランは目を覚ました。

 

そこからの行動は早い。
着替えて、顔を洗うとキッチンにすぐ立っていた。
俺はそんなあいつを母親につき従う子どものように後ろをついて見つめていた。

「スクランブルエッグとポーチドエッグ、どっちが良い?」

「んー・・・俺、半熟なの好きじゃない」

「じゃあスクランブルエッグね」

卵をいくつかボウルに割り、手早く溶いていく。
俺はというとランのエプロンの紐をなんとなくいじりながらその姿を見ていた。
朝食が出来上がっていく様を間近で見つめてると、ランがくすりと笑った。

「そんなに真剣に見つめて、どうしたの?」

「ん、あっという間に出来ていくなぁ」

「ふふ、そう?
もう少しだから待っててね」

「おう」

それから15分も経たないで朝食はテーブルに並んだ。

「それじゃあ、いただきます」

「はい、召し上がれ」

ランが作ったスクランブルエッグを口に運ぶ。

「ん、うまい」

「良かった」

テーブルに向かい合って食事をする。
ランが嬉しそうに笑うから、人と食事をするということがこんなに幸せな事なんだって知った。

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