ー8:00
目を開けるには瞼があまりにも重い。
回されている腕のぬくもりに甘えるように少し開いた目を閉じる。
私が起きているのに気付いたのか、私を抱きしめている腕が、そっと頭を撫で始めた。
「・・・おなじ匂いする」
「なにが?」
「おまえ、起きてたのか」
「まだ眠いけど・・・起きてるよ」
「ん・・・」
眠っていると思った私が起きていたのが恥ずかしかったのか、私を抱きしめる腕の力が少しだけ強くなる。
その腕に自分の手を置くと、頭を撫でていた手は私の手を握った。
「おまえ、あったかいな」
「ヴィルヘルムだってあったかいよ」
他の人とこんな風にくっついて眠ったことがないので分からないけど、
幼い頃怖い夢を見て、お母さんの布団にもぐった時のような安心感が彼の腕の中にはある。
「そろそろ起きないとだめだよね」
重い瞼を頑張って開くと、ヴィルヘルムは私の後頭部に優しく口づけた。
「今日は日曜なんだし、もう少しこのままでも良いだろ」
「ん・・・そうだね」
休みの日でも出来る限り生活リズムを崩さないようにしているんだけど、今日は眠くて駄目そうだ。
彼の言葉に素直に同意して、私は頑張って開いた目を閉じる。
「ヴィルヘルムの腕のなかって安心するね」
「・・・俺も、こうしてると安心する」
二人の間のすき間をなくすように、彼がぎゅっと抱きしめてきたことを嬉しく思いながらも私は睡魔に勝てず、眠りに落ちた。