「ガウェイン!」
「おう、アル」
ようやくガウェインの姿を見つけられたことが嬉しくて、思わず名前を呼ぶ。
振り返ったガウェインは振り返って、私の方へ方向転換する。
駆け足気味だったこともあり、ガウェインにぶつかりそうになるが彼の腕に抱きとめられる。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう」
「ん、なんか甘い匂いするな」
少し屈んで私の髪や首筋あたりをふんふんと嗅ぐ。
それが恥ずかしくて、慌ててガウェインの顔を押し返すと、私の手にぶら下がっているものに気付いたようだ。
「うん、ガウェインと一緒に食べようと思って作ってきたの。
どうかな?」
「お、いいな!」
ガウェインも頷いてくれたので、二人並んで歩き始めた。
ちらりとガウェインの手を見るが、私の視線に全く気付かない。
わざと指を触れさせると、ガウェインは少しだけ驚いたように私をちらりと見た。
「・・・」
「・・・」
お互い相手の出方を伺うような沈黙が流れる。
手を繋ぎたいと伝えるのってなんだか恥ずかしい。
カウェインから手を繋いでくれたら嬉しいのに。
じっと彼の手を見つめてみると、押し黙っていたガウェインが軽く咳払いした。
「あ、あのよ。アル」
「うん」
「手、繋がねえか?」
そう言って下がったままだった手を私に差し出す。
顔を見ると、頬が紅潮していた。
「うん、繋ごう!」
嬉しくなって私はすぐガウェインの手を握った。
ガウェインの手はごつごつとしていて、私の手をすっぽりと隠せるくらい大きい。
ああ、男の人の手なんだなと思うと繋ぎたいと思っていたくせに急に恥ずかしくなってくる
「アルの手、小さな」
「え?」
「お前のこと、好きだなあって・・・」
「・・・っ!」
「いや、今は待て、違う!違わないけど違う!!」
ぽろりと零れた言葉に二人で顔を真っ赤にする。
「あ、うん!分かってる!大丈夫だから!」
「・・・お、おう」
「私も、ガウェインのこと好きだからね・・・」
「~っ!!だから今は!」
「あ、ごめんなさい!」
そんなやりとりを続けながら私たちはようやく庭にたどり着いて、腰を落ち着かせるのだった。
「はい、どうぞ」
「お、美味そう」
「久しぶりに作ったから美味しく出来てるか心配なんだけど」
バターをたっぷり使ったパウンドケーキ。
昔はよくエレインと作ったなぁ、と作りながら思い出していた。バスケットから一切れ取り出して、ガウェインに手渡す。
「ガウェイン、お誕生日おめでとう」
「え?」
パウンドケーキを受け取りつつ、驚いたように私を見る。
「あれ、間違ってる?」
「いや・・・合ってる。どうしてお前知って・・・」
「ランスロットに聞いたの。今日が誕生日だって。
本当はプレゼントを買いに行きたかったんだけど・・・
出掛ける時間がなくて・・・」
「いや、すっげー嬉しい!ありがとな、アル!」
そう言ってパウンドケーキを口に放り込む。
もぐもぐと咀嚼すると、ぱぁっと笑顔に変わった。
「すっげー美味い!」
「良かった!」
「ほら、アルも食べろよ」
バスケットから一切れ取り出すと、私に差し出してくれる。
「ありがとう、ガウェイン」
彼から受け取って、私も食べ始める。
「よかった、美味しく出来てる」
「アルって料理うまいよな」
「え?そうかな」
「前作ってくれたのもうまかったし・・・
お前の手料理、もっと食べてみてえなっておもう」
「嬉しい!また作るね」
「お、おう」
それからガウェインとおしゃべりをしながら穏やかな時間を過ごした。
あっという間にパウンドケーキを平らげてくれたことに私は幸せな気持ちになる。
「ご馳走さん」
「喜んでもらえてよかった」
「あ・・・あのさ」
「ん、なに?」
ガウェインの方をむくと、彼はなぜか頬を赤らめながら頬をかいていた。
「俺、今夜食べたいものあるんだけど・・・いいか?」
「え?うん、用意が間に合うものであれば」
私が頷くと、ガウェインは私の肩を引き寄せてそのまま抱き締める。
驚いて、彼を見上げようと顔を上げるとすぐ傍に彼の顔。
そして、唇が重なる。
「ん・・・っ」
唇からまるで想いが伝わるようでくらくらする。
少しの時間だろうけど、私には何分もの時間に感じた。
「アル、お前が食べたい」
小さく耳元で囁かれて、私の体温が上がる。
顔を見られるのは恥ずかしくて、私はこくりと頷くのが精一杯だった。
HAPPY BIRTHDAY Gawain!!