「あっちいなぁ」
「暑いねぇ」
季節はすっかり夏になった。
いつも薄着なガウェインも気温のせいだろう、吹き出る汗にぐったりしている。
ぱたぱたと近くにある薄めの本で仰ぐと、ガウェインは気持ち良さそうな顔をする。
「涼しい?」
「おう、ありがとな。
次は俺がやってやるよ」
「え、良いよ。私が仰いでてあげる」
「いいから、俺に任せろって」
「でも」
二人で押し問答していると、近くにいたガラハットが勢いよく立ち上がり、私たちから本を奪った。
「暑苦しいから二人でどっか行ってくれば?」
「「・・・はい」」
暑さなんて微塵も感じさせない涼しげな顔をしたガラハットに叱られて、私たちは海へと足を伸ばすことにした。
「んー!やっぱり海に来ると涼しく感じるねー!」
「ああ、そうだな」
砂浜に立つと、思い切り伸びをする。
日差しがじりじりと感じられるが、潮の香りがする風が心地よい。
「少し、海に入るか」
「うん!」
それぞれ靴を脱ぐと、海に足を入れる。
「すっごい気持ち良い!
ガウェインも早く!」
「そんなに急かすなよ」
「だってすっごい気持ち良いよ!」
ガウェインの方を振り返って、気持ちよさのあまり顔はほころぶ。
だけど、海に入ったのにガウェインの頬は心なしか先ほどより赤くなっている気がする。
「あれ、気持ちよくない?」
「ああ・・・気持ち良いな!
アル!貝とか探そうぜ!」
「うん!」
ガウェインに手をとられ、私たちは浅いところをゆっくり歩いた。
手を繋いでいる方がきっと暑いのに。
ガウェインの手をきゅっと握り返すと、彼が驚いた顔をして振り返った。
「どうかした?」
「ん、いや」
思い返せばただ手を繋いで歩くことも、最近していなかった気がする。
私の前を歩くガウェインの背中を見つめながら、自然と微笑んでいた。
「ガラハットに感謝しないとね」
「俺も今、そう思ってた」
ガウェインの耳を見ると、赤くなっていることに気付いた。
どんな表情でそう言っているんだろうか。
そんな彼が、たまらなく愛おしい。
「えい!」
繋いでいた手を離し、そのまま彼の背中に飛びつく。
「うおっ!」
「ふふ、ガウェイン大好きだよ!」
「・・・っ!ばか、俺だってお前が好きだ!」
私に飛びつかれると、顔だけ振り返っていつかの夜みたいに愛を叫んだ。
それがまた嬉しくて、振り返った彼の頬に口付けをした。
そんな夏のある日。