久しぶりにいつものメンバーが揃った。
小学生の頃、はみ出し者同士の寄せ集めだった俺たちは今もこうしてたまに顔を合わせる。
そう・・・あの、タイムカプセルを開けてから定期的に集まるようになったのだ。
それまでは撫子とは一緒にいる事が多かったが、それ以外は終夜とたまに会うくらいだった。
あの頃の俺が、今の俺を見たらどう想うんだろうか。
群れることは今でも好きじゃない。
だけど、こいつらとたまに会うのは悪くない。
ビールを飲み干して、なんとなく周りにいる奴の顔を見ていると隣にいた撫子が気付けば俺に寄りかかっていた。
レポートだなんだ、と忙しく日々追われているからだろう。
疲れを見せないようにしていたが、アルコールが入って気が緩んだのだろう。
右側に感じる体温に、気付けば笑みを零していた。
「それにしても・・・トラさんと撫子さんも長いですよね」
「そうだよねー!中学校の頃からだっけ?」
「んだよ」
英兄弟がそんな俺たちを見て、そんな言葉を投げてくる。
すっかり酔っ払っている加納は泣きそうな声でわめいているが、いつものことなので気にしない。海棠は・・・まぁ、加納と似たようなものだし、終夜は机に突っ伏して眠っている。
「不良少年とお嬢様!うんうん、なんだかにやにやしちゃうねー」
「うるせーぞ、英兄」
「トラさん、央が空気を読めず言葉を発するのは小さい頃からのことですので気にしないでください。
ただのやっかみです」
「え?円、お兄ちゃん泣いちゃうよ・・・
でもさ、二人はお似合いだと思うよ、俺」
空になったビールジョッキを見て、もう一杯注文しようかどうか悩む。
隣の体温をちらりと見ると、気持ち良さそうに眠っている。
門限までは時間あるけど、そろそろ送っていっても良いだろう
「トラくん、撫子ちゃんといると優しい顔するもんね」
「何言ってんだよ・・・
これ、俺と撫子の分。先に帰るわ」
「うん、了解」
二人分の代金をテーブルに置き、撫子の左腕をとる。
ぼんやりとした顔で俺を見てくる撫子の頬をゆるく撫でてやると嬉しそうに笑った。
「またね、トラくん。撫子ちゃん」
「ちゃんと家に送ってあげてくださいね、トラさん」
「ああ、じゃあな」
それぞれに軽く挨拶を交わすと、俺と撫子は店の外へ出た。
いつも通る並木道。
撫子はまだ酒が抜けないのだろう。
火照りが繋いだままの手のひらから伝わってくる。
「おい、撫子・・・」
「なあに?とら」
「お前、酔ってるだろ」
「よってない」
いつもより舌足らずな口調で何を言ってるんだろうか。
昔からしっかりした気の強い女だった。
だから酒の力といえど、こんな風な姿を見るのはなかなか貴重だ。が・・・他の連中にも見られるというのは面白くない。
「お前今度から酒は一杯な」
「えー、どうして?とらはたくさんのんでるじゃない」
「俺は酔わないから良いんだよ」
「でも・・・」
繋いでいる手を強く引き寄せると、撫子の耳朶を口に含む。
突然のことに驚いたのか、離れようとするのを空いてる手で阻む。
首筋に痕が残らない程度に歯を立てると、びくりと身体が強張った。
「分かったか?」
こくこくと頷く撫子の頭をぽんぽんとなでると、再び歩き出す。
「とら」
「ん?」
「とらの手、あたたかいわ」
「お前の手もな」
空を仰ぐと、月が笑っているようにみえた。