休みの朝はいつもより起きる時間が遅くなる。
夕べの名残もあって、私はぼんやりとベッドのなかで丸くなる。
「ラン」
背後から聞こえた声に、私は振り向かないで目を閉じる。
ヴィルヘルムの腕が私を抱き寄せるように私を胸のなかにおさめた。
まるでコアラの親子のようだ。
「・・・ラン」
返事をしない私を心配したのか、小さな声でもう一度私を呼ぶ。
「なに?」
「・・・腹減った」
彼のおなかに手を伸ばし、そっとなでる。
シャツの上からでも充分に分かる筋肉のついたお腹が、心なしかへこんでいるように思えた。
「じゃあ朝ごはん、用意するよ」
「おう」
そう言いながらもヴィルヘルムは私を腕から解放しようとしない。
「離さないと、ご飯できないよ?」
「分かってる」
拘束を緩めるどころか、少しきつく私を抱き締める。
「だけど・・・もうちょっとだけこうしてたい」
珍しく甘えるように言う彼に、愛おしさを覚えた。
カーテンの隙間から差し込む光が、もう起きる時間だと告げているけれど私はもう一度目を閉じた。
「もう少しだけだからね」
いつもより遅めの朝。
彼の腕のなかは幸せだ。