お風呂から上がったインピーの髪をブラシでとかす。
二人で暮らすようになってから、これは私の日課。
ベッドの上でインピーの後ろからブラシを通す。
「はぁ~。カルディアちゃんがやさしく髪触ってくれるって天国・・・」
「毎日のことなのに、おおげさだよ。インピー」
私の髪よりもボリュームがあるインピーの髪は、丁寧にしないとすぐごわごわになってしまいそう。
ブラシを動かす私をシシィがうらやましそうにじっと見つめていた。
「シシィもインピーが終わったらしてあげるね」
「わん!」
「ふっふーん。先にやってもらえるのは恋人の特権なんだよ、シシィさん!」
得意げに笑うインピーが面白くなかったのか、シシィはうなり声をあげながらインピーへ近づいた。
「え、ちょっと。待って!なんでそんなうなってるの?!」
「シシィ、順番だからね?」
シシィを数回撫でると、それで少し機嫌を直してくれたようで甘えるように膝の上に乗ってきた。
インピーは少し振り返って、その様子を見て優しく微笑んだ。
「シシィはカルディアちゃんのこと、大好きだよね」
「私もシシィ、大好き」
シシィのぬくもりに、存在に何度助けられたか分からない。
シシィが何を考えているか全て分かることは出来ないけれど、シシィが私を好きだと思ってくれていることが素直に嬉しい。
「俺もシシィ、好きだよ。
でも、カルディアちゃんが一番すき」
「・・・インピー」
「痛い!カルディアちゃん、愛が痛い!!」
不意打ちの言葉に恥ずかしくなって、インピーの頭を掴んで無理やり前を向かせた。
それから黙ってインピーの髪をとかし続けると、彼は鼻歌を歌い始めた。
インピーって意外に歌が上手・・・って言ったら「意外ってなに!?」って言われそうだからおとなしくその歌を聞き入る。
綺麗にとかし終わると、インピーの髪から手を離す。
「終わったよ、インピー」
「ありがとう!」
そう言って振り返ろうとしたインピーの背中にきつく抱きついた。
驚いたらしく、インピーが息を呑むのが分かった。
「ねえ、インピー」
「なに?カルディアちゃん」
「明日・・・デートしよう」
最近ゆっくり二人でいる時間が少ない。
夜、この時間だけでは足りないって思ってしまう自分がいる。
「・・・インピー?」
私の言葉にインピーは返事もせず、動きもしない。
心配になって顔をあげて、彼の後姿を見ると耳が真っ赤になっていることに気づいた。
「ごめん、カルディアちゃん」
拘束が弱まり、インピーは振り返ると私の肩を掴んでそのまま押し倒した。
膝の上にいたシシィは迷惑そうにしながらも空気を読んでベッドから降りる音がした。
インピーの顔が近づき、そのまま唇が触れ合う。
いつも優しいキスばかりくれるインピーが、今日はいつもより熱っぽくて。
気づいたら私も身体が熱くなっていた。
「寂しい思いさせてたのかな。
でも、俺・・・カルディアちゃんがデートしたいと思ってくれてすっごく嬉しい」
唇を離すと、インピーが微笑んだ。
だけど、その笑みもいつもより大人っぽい。
「明日のデートは、午後からにしよう?
だから・・・」
インピーの言いたいことが分かると、頬が紅潮してしまった。
だけど、私ももっとインピーに触れたかったからこくりと頷いて彼の背中に手を回した。
今日も明日も明後日も、
あなたとずっといれますように。