座学の授業は大体隣で眠っているヴィルヘルムを起こすことが日課だ。
今日も何度か彼を起こしつつ授業を受けて、ようやく全てが終わるとヴィルヘルムとルナリアの木のもとへ散歩に出掛けた。
「もう・・・いっつも寝ちゃうんだから。
エリアス教官、ため息ついてたよ?」
「だって眠いもんはしょうがねーじゃん」
ヴィルヘルムは私の小言なんてお構いなし、といった風に大きなあくびをした。
「いつも寝るの遅いの?」
「あー・・・部屋にいるときは大体寝てるぞ」
「そうなの?」
もしかして魔剣の後遺症みたいなもので、寝ても寝ても寝たりないみたいになっているのならどうしよう、と彼を見つめるとヴィルヘルムは私の頭をぽんと撫でた。
「おまえといない時間は退屈だからな」
「・・・っ」
何も考えずにヴィルヘルムは口にしたのだろう。
だけど、私には効果は絶大で思わず言葉に詰まってしまった。
「そうだ、眠気覚ます方法考えよう!」
「いいってそんなこと」
「だってせっかく授業受けてるんだからヴィルヘルムのためになる事もあるかもしれないでしょ?」
「俺は実戦で学ぶタイプなんだよ」
「もう・・・自分のことなんだからもっと真面目に考えて!」
まるで子どもが駄々をこねるように言うから、私もムキになって言い返す。
すると、ヴィルヘルムは私の肩を抱くように引き寄せると少し屈んで触れるだけのキスをしてきた。
「・・・っ!」
「ようやくふたりきりになったんだからさ・・・」
突然のキスだったので、私は驚いてヴィルヘルムをじっと見つめてしまう。
見つめられることが恥ずかしかったのか、私の視線から逃げるように肩口に顔を埋めてきた。
「おまえを独占したっていいだろう」
「・・・ずるいんだから」
喜ばせるようなことを言って、誤魔化そうとしたって明日も授業中寝てたら起こすんだからね。
でも、言葉も態度も嬉しかったから今日はおとなしく誤魔化されてあげよう。
気付かれないようにくすりと笑うと、私はヴィルヘルムを抱き締め返した。