未来のことは分からないけど(拓珠)

授業が終わり、教室でぼんやりと拓磨を待つ。
先生に呼び出されることは度々あるし、その都度先に帰っていいといわれるけれど私はいつもこうやって拓磨を待っている。
自分の席に座らず、拓磨の席に座って・・・

(拓磨の席からだと、私の席よく見えるよなぁ)

頬杖をつきながら自分の席を見る。
拓磨は授業中、こうやって私の後ろ姿を見ていたりするんだろうか。
プリントを後ろへ回すとき、いつも私は拓磨の様子も見てしまう。
起きているだろうか、ちゃんと授業聞いてるだろうか。
そんなお母さんみたいな気持ちで彼の様子を見て、たまに目があうと少し照れくさい。

 

教室のドアがガラっと開くと、拓磨が戻ってきた。

「悪い、待たせたな」

「ううん。もう帰れるの?」

「ああ」

席を立ち、自分のカバンと拓磨のカバンを持って彼の隣へ移動した。
私からカバンを受け取ると、ちらりと私を見て視線を外す。

「どうかした?」

「ん、いや」

それから二人で学校を出て、いつもの道を歩く。
今月から夏服に変わり、じわじわと暑くなってきているけれど夕方になれば過ごしやすい。
拓磨の手に自分の手を伸ばす。
指先が触れ合っただけで、拓磨の頬が赤くなった。
私もそれにつられて頬が熱くなる。
触れた指を引っ込めようとすると、逃がさないとでもいうように拓磨に手を握られた。

「・・・えと」

「・・・夕方は涼しくなったな」

「うん、そうだね」

手を繋いでいるだけなのに、心臓がうるさい。
キスだって何回かした事あるし、抱き締められたこともあるのに。

「お前と過ごす初めての夏だな」

「うん・・・受験生だからあんまり遊べないけどね」

「それは・・・まぁそうだな」

「でも、今年だけじゃなくて・・・来年もその次もこうやって一緒にいるでしょう?」

未来のことは分からない。
もしかしたらどちらかが大学に落ちてしまって離れ離れになるかもしれないし、そうならないかもしれない。
大学を卒業した後のこともはっきりとは分からない。

だけど・・・
これから先も拓磨と手を繋いで歩いていけたら良いな、と思っている自分がいる。

「ああ、そうだな」

拓磨ははにかむように微笑んだ。

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