「あ、夏彦さん!これ見てください!!」
部屋に戻ると、雪が駆け寄ってきて雑誌を広げてきた。
その動きが煩わしくて、思わず銃を構えそうになるが深琴が部屋にいるのに気付いてぐっと堪える。
「・・・なんだ、雪」
「ここ!血液型占いですよ~!
O型の夏彦さんはなんと・・・!!」
息を荒げて近づいてくる雪がやはり気持ち悪くて、雑誌を手から奪って部屋から追い出す。
「な、夏彦!?」
「構わないだろう、いつものことだ」
部屋に鍵をかけるのを忘れず、深琴の隣に腰掛ける。
「夏彦さん!?俺を追い出して、二人でいちゃいちゃするつもりですね!!
ハードなプレイをするんならぜひこの雪も!雪も仲間に!!」
「うるさい、どこかへ行け」
部屋の外にいる雪には届かないだろうが、我慢できずにぽつりと呟く。
深琴はなんともいえない、という風に俺を見ていた。雪から奪った雑誌に目を落とすとカラフルなページに何のページか一瞬分からなかったが血液型占いだとようやく思い出した。
「これは・・・?」
「血液型占いが載ってるって雪が持ってきてくれたの」
「そうか」
女というものは占いなどが好きだと聞いたことがあった。
深琴も好きなのだろうか。彼女の血液型の欄を探す。
「夏彦はここよ」
「俺のことはいい。お前のはどこだ」
「・・・っ」
深琴をちらりと見ると、なぜか頬を赤らめていた。
細い指が移動し、A型の欄をさした。
「今月は運勢良いんですって」
「そうか、良かったな」
「・・・夏彦とも、相性が良いみたい」
A型とO型の相性について書いてある欄に指が滑る。
二人の相性は抜群!と太字で書いてある後、
『ロマンチックなデートでお互いの仲が深まります!』という一文。
「・・・ロマンチック」
「あ、ねぇ夏彦」
「ん?」
「星が見たいわ、私」
「お前が望むならいつでも行こう」
仕事は他の時間にやればいいのだ。
深琴が望むことはなんでもしてやりたい。
彼女の肩を抱き寄せると、一瞬体が強張るがすぐに力は抜けた。
それから俺の肩に甘えるようにもたれかかる。
人に甘えることが苦手な女だったのに、少しずつ甘えてくれるようになった。
この体温から離れることが出来ないのはきっと俺だろう。
・・・離れるつもりなんて毛頭ないが。
「深琴、」
頬にかかる長い髪をそっとよけて唇を寄せた。
大人しく目を閉じて、口付けを受け入れる彼女に今日はどんな星の話をしようかと考えると自然と微笑んでいた。