眠る時、ミニドラゴンの姿になってご主人様に抱き締めながら眠る。
それが当たり前になった日常から切り離され、一人で眠るベッドは酷く冷えていた。
孤高のドラゴンが、何を言っているんだ・・・と自分でも思う。
けれど、私を孤高から引き摺り下ろした存在に飼いならされてしまったのだ。
(ああ・・・顔がみたい)
城にいた頃はいつだって一緒にいた。
ご主人様がいないと満足に眠ることも出来ない。
そんな事を話すと、呆れたような表情を作り、嬉しそうな笑みを浮かべた。
ご主人様の表情はどれだって好きだ。
呆れて蔑むときの表情にゾクゾクする。
他人に見せる作り笑いなんかより、そういう表情のご主人様が好きでたまらない。
早く城に戻って・・・いや、城じゃなくてもどこでもいい。
ご主人様と二人だけの世界に戻って、抱き締められて眠りたい。
そんな事を考えながら、ようやく浅い眠りに落ちた。
◆
「セラス、あんたまだ思ってるの?」
「何をですか?」
二人だけの時間。
ベッドでご主人様を抱き締めていると、ご主人様がぽつりと問いかけた。
「私が死んだら自分も死ぬって」
「ええ、もちろんです」
間髪いれず頷くと、呆れたようにため息をつく。
そうして、私の頭に手を伸ばして優しく撫でてくれる。
その手が心地よくて、つい目を閉じて受け入れてしまう。
ご主人様から与えられるものはなんだって嬉しいのだ。
優しさでも怒りでも、悲しみでも。
私からこの人を奪わないで欲しい。
あなたなしでは生きていけない私にしたのだ。
あなたが死んだ世界であなたが転生してくるのを待ったとしても、それはあなたじゃない。
私が焦がれるあなたは、今腕の中にいるあなただけだ。
「あなたがいない世界なんて意味がありません」
ご主人様の髪にそっと口付ける。
髪の一本だって、他の奴には渡したくないのだ。
それくらい、私はご主人様に依存している
「どうしようもないドラゴンね」
「ええ、あなたがそうさせたんです」
私の言葉を聞くと、ご主人様は満足げに微笑んだ。
二人で眠るベッドは暖かかい。
もう一人で過ごす夜なんて私は知りたくないのだ。