未来の約束(ユンフウ)

「フウちゃんフウちゃん、明日何の日か覚えてる?」

仕事が終わって、ミーティングルームでナチが淹れてくれた紅茶を飲んで一息ついてるとユンがにこにこしながら私の隣に座った。

「明日はお休みですね」

パートナーであるユンももちろん休みだ。
ユンはご機嫌な顔を崩さず、私に甘えるようにすりよってきた。

「もう!お休み以外にもあるでしょ?大事なことが!」

「そうですね・・・久しぶりに買い物に行きたいです。
付き合ってくれますか?」

「・・・フウちゃん、わざとやってる?」

「何がですか?」

「なんでもない」

私のそっけない言葉を聞いて、ユンの顔から笑顔が消えた。
露骨なため息を零して、私の肩にもたれかかる。

「さて、部屋に戻りましょうか」

残っていた紅茶を飲み干すと、ユンに声をかける。
不貞腐れた顔をして、私を見つめるユンが子供みたいで可愛くて思わず笑ってしまう。

「なんで笑ってるの、フウちゃん」

「すいません。ユンが可愛くて」

「可愛いのは俺じゃなくて君だよ!」

「ふふ、ありがとうございます」

ユンの頭を優しくなでると、少し機嫌を直してくれたのか私の空いてる手を握る。

「フウちゃん、明日が何の日か覚えてなくてもいいから・・・一緒にいてくれる?」

「はい、もちろんです」

ユンの言葉に頷くと、彼は安心したように微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

さて、ユンと部屋の前で別れて部屋に入るそぶりをした後、キッチンに舞い戻る。
冷蔵庫に入れておいたそれを確認し、私は最後の仕上げに取り掛かることにした。

 

 

 

 

「はぁ~・・・フウちゃんひどい」

フウちゃんと別れて部屋に戻った後、俺はベッドの上で丸くなっていじけていた。
明日は誕生日なのに。
フウちゃんと初めて過ごす誕生日なのに!!
アピールするのが早すぎたのかな。2ヶ月くらい前からさりげなーく話題に出していたから忘れちゃったのかな。
何かがほしいわけじゃない。
自分の生まれた日を、好きな子と一緒に迎えたい。おめでとうって笑ってくれるだけで良いのに。

「でも明日、一緒にいれるから良いか・・・」

買い物に行きたいって言っていたし、それに付き合おう。
もしも、明日が終わる頃までおめでとうって言ってもらえなかったら自分で誕生日だって伝えちゃおう。

「フウちゃんのばーか・・・でも、フウちゃん可愛いからなぁ」

胎児のように体を丸めている内に、気付けば眠りに落ちていた。

 

 

 

てふてふてふてふ

 

「・・・ん?」

 

てふてふてふてふ

と、俺のてふてふが鳴っていた。
体を起こし、通信を確認する。

『これから部屋に行きます』

フウちゃんからそんな通信が入っていた。
慌てて起き上がると、見計らったようにドアを叩く音がした。

「フウちゃん、どうした・・・」

「ユン、お誕生日おめでとうございます!」

ドアを開けると、フウちゃんがいた。
フウちゃんの手にはケーキがあって、そこには『Happy Birthday ユン!』と書いたプレートが乗っていた。

「フウちゃん・・・!」

「部屋、入ってもいいですか?」

「うん、どうぞどうぞ!」

フウちゃんを部屋に招き入れると、テーブルにケーキを置いてくれた。
フウちゃんは振り返って微笑んでいた。

「どうして?さっき、え!?」

「ユンを驚かせたくて、忘れてる振りをしました、ごめんなさい」

覚えててくれたという事と、俺を驚かせたいと思ってくれた事。
そのどちらも嬉しくて、気付けばフウちゃんを抱き締めていた。

「ありがとう、フウちゃん。すっごい嬉しい」

今の自分の気持ちをどう言えば、フウちゃんに伝わるのか分からなくてただきつく抱き締める。
フウちゃんの髪が俺の頬にあたり、少しくすぐったい。
彼女の腕が背中に回り、抱き締め返される。

「誕生日おめでとうございます、ユン。
あなたの誕生日をこうやって祝えること、凄く嬉しいです」

しばらく抱き締めあっていたが、フウちゃんが顔をあげて俺を見つめた。

「少しかがんでください」

「?うん」

心なしか頬を赤く染めたフウちゃんが可愛くお願いしてきたので、俺は言われたとおり少し屈んだ。
フウちゃんの手が俺の両頬に触れ、顔が近づく。

「んっ・・・」

滅多にないフウちゃんからのキスに思わず目を見開いてしまうが、
目を伏せてキスを続けるフウちゃんが可愛くてそのまま見入ってしまう。
フウちゃんの後頭部に手を回して逃げれないようにすると、深いキスに切り替える。
唇から漏れる声にくらくらする。

「・・・っはぁ」

「フウちゃん、ありがとう。
フウちゃんからキスしてもらえるなんてすっごい嬉しい」

唇を離し、フウちゃんの耳元で囁くと体がぴくりと震えた。

「ねぇ、フウちゃん。誕生日に欲しいものがあるんだけど、いいかな」

「・・・なんですか?」

「フウちゃんが欲しい、すごく」

フウちゃんの瞳をじっと見つめる。
意味を悟ったのか、フウちゃんの顔が再び赤くなる。

「誕生日じゃなくたって、私はユンのものです」

フウちゃんは赤くなったまま、そう言葉を返してくれた。

「・・・!フウちゃん、君って本当に可愛すぎる!!」

ぎゅっと抱き締めると、フウちゃんは笑ってくれた。

「来年も再来年も、こうやって一緒に誕生日をお祝いしましょう」

「うん、君の誕生日も目一杯お祝いするね」

「ふふ、楽しみにしてます。
でも、今日はユンを目一杯お祝いさせてください」

フウちゃんから頬に軽いキスを貰うと、俺は笑顔で頷いた。

 

Happy BirthDay!!

 

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