願い事(ALL)

「マジ意味分かんない。
無理だって俺言ったと思うんだけど、それをどうして実力行使されるんだよ。
横暴じゃない?」

ナナさんはわめくレイラを無視してエレベータに乗り込んだ。
目指すは屋上だ。
高いところが苦手なレイラは上の階へ進むにつれて顔が真っ青になっていく。

「レイラ、大丈夫ですか?」

「大丈夫に見えてるならアンタ鬼だし、心配してくれるんなら俺を下におろしてほしいんだけど」

「それは・・・私からはなんとも」

屋上へ行こうと言い出したのはユンだ。
ユンとミクト、ナチは既に屋上へ移動しており、エレベータの中にはいない。
毎回思うが、早口でまくしたてるように話すレイラの口数が減っていくのは怯えているのが凄く伝わってくる。
少しでも恐怖が薄まればいいと思い、レイラの手をきゅっと握った。

「ああー!レイちゃんだけずるい!!」

その様子を見ていたチカイが大きな声を出したかと思えば私を後ろから抱き締めた。

「ちょ、チカイ!何するんですか!」

「だってレイちゃんばっかりずるい!俺もフウちゃんに触りたいー!」

「レイラは怖がっているけれど、チカイは平気でしょう?」

「平気だけど、触りたいんだもん。しょうがないよねーキャハハ★」

「チカイ、フウが困っているだろう」

見かねたナナさんが私の腕を取って、自分の方へと引き寄せた。
突然のことで足がもつれてしまい、ナナさんの胸に倒れこんでしまった。

「っ!!」

「すいません、ナナさん」

「いや!フウが無事ならいいんだ!」

「・・・ナナ、若い子に触って赤くなるなんてキモい」

「ちょっと下心が見えちゃったなー、ナナちゃん」

「な!何を言ってるんだ!!そんなことはない」

「それよりフウ返して」

今度はレイラに引き寄せられ抱き締められた。
きつく抱き締められ、戸惑うがレイラの体が小刻みに震えているのに気付くと無下に振り払えない。

「レイちゃんもなんだかんだ言ってむっつりだよね★」

「は?それはナナだろ」

「違う、断じて違う」

そんなやり取りをしている間にエレベータはようやく屋上へついた。
扉が開くと、先に移動していた三人の姿がある。

「お、ちゃんとレイラ捕まえたんだー!さっすがナナさん!」

「うるさい、黙れ歩く18禁」

「ちょ、俺変なことなにも言ってないのに!」

「そんな事より早く移動するッスー!」

「ですです!フウちゃんはこっちに来てください」

「え?」

ミクトに手を取られる

「ここが一番良い場所です」

「ありがとうございます、ミクト」

ミクトと一緒に地面に座る。
ミクトが座っていない側、つまり私の隣に滑り込むようにユンが座る。

「ミクト、抜け駆けずるいだろー!俺だってフウちゃんの隣が良いんだからな!」

「うふふ、早い者勝ちです。ねえ、フウちゃん?」

「えーと、誰が隣に座ってもいいんじゃないでしょうか」

「だってこんなロマンチックなイベント、フウちゃんの隣で見るしかないでしょう?」

ユンが私の手を取り、手の甲へ唇を寄せようとした・・・その時。

「はいはーい。皆さん、お茶の用意ばっちりッスよ!」

ユンを蹴り飛ばす勢いでナチがやってきた。
お茶をみんなに配ると、ユンが座っていた場所にナチが座った。

「ちょ、ナチ!なんで俺を蹴り飛ばした上にそこに座るんだよ!」

「自分も遠慮しない事に決めたッス」

「え?え!?」

「そんな事よりそろそろじゃないですか?」

周りは相変わらず騒がしい。
今日は数年に一度しか来ないという流星群を見るためにみんなで屋上へ上がった。
それを心待ちにして、空を見上げる。
今日は見事に晴れていて、星空がキラキラと輝いている。

「フウちゃんは流れ星に何か願い事決まってるんスか?」

「はい、決まってます」

ナチにそう微笑むと、ミクトが声をあげた。

「流れた!」

「わぁ、凄い!」

「綺麗だな」

「ですです!」

流れる星を見ながらみんなではしゃぐ。
きっと一人で見る流れ星より、こうやってみんなで見るからより一層綺麗に思えるんだろう。
私は願うことはたった一つ。

いつまでも、こうしてみんなで笑っていられますように。

 

良かったらポチっとお願いします!
  •  (2)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA