※同棲中の二人ということ設定でお願いします
「何読んでるんだ?」
ソファでユリアナに借りた雑誌を読んでいると、ヴィルヘルムがお風呂から上がってきた。
彼は長湯が苦手で、いつもきちんと湯船につからない。
「ユリアナに借りたの。
それよりちゃんと湯船に浸かって、10数えた?」
「数えた数えた」
きっと数えてないだろうけど、くっついてきた彼の体はいつもより温かかったので問いつめないでおく。
読んでいた雑誌を最初のページに戻し、ヴィルヘルムにも見えるように角度を変える。
「なんだ、それ」
「ウェディングドレスがたくさん載ってるカタログ」
「ウェディングドレスってあの白いやつか?」
「そうだよ。白いだけじゃなくて、色んな形があるの」
ページをめくっていって、ヴィルヘルムに色々なタイプのものを見せるがヴィルヘルムは不思議そうに首をかしげる。
「どこが違うのか全然わかんねえ」
「もう・・・レースとか形とか色々違うでしょ?」
「そういうちまちました感じの違い、わかんねえよ」
「男の人は興味ないものね」
ユアンさんがドレス選びにあまり興味がないとユリアナも嘆いていたっけ。
男の人からしたらよく分からないのかもしれない。
そう思いながら次のページへ進んだ。
「お、これお前に似合いそうだな」
ヴィルヘルムが指差したのは私が一番気に入ったものだった。
「本当?」
「ああ、なんか後ろについてるリボンとかお前に似合いそう」
「・・・っ」
エンパイアラインのドレスは切り替えが胸の下ということで妊婦さんでも着られるというものだ。
胸の下で切り替えが入っているのも可愛いな、とすぐ目を奪われた。
それをヴィルヘルムが良いと言ってくれたのが嬉しくて思わず言葉につまる。
「ヴィルヘルムはどんなの着たい?」
「俺がこれ着るのか?」
「違うよ。男の人用の話」
ページをぱらぱらとめくると、タキシードのページへ移動した。
男性のものはそこまで種類が多くないので数ページで終わってしまうがヴィルヘルムに1ページ1ページ見せる。
「堅苦しいなぁ、どれもこれも。
俺、ここ締まってるの好きじゃないんだけどな」
嫌そうな顔をしながら首周りを撫でた。
鎧以外のもので締め付けられるのが苦手だ、と以前から言っていたのを思い出す。
「じゃあ、着れないよね」
「・・・お前が着てほしいって言うんなら着る」
「本当?」
「ああ」
「嬉しい、ありがとう」
「・・・」
急に私の頭を引き寄せると、ヴィルヘルムの肩に頭を預けるような格好になった。
私の頭を優しくなでながら、撫でていない側にヴィルヘルムの頭が寄りかかる。
「おまえは?」
「え?」
「お前はさっきの、俺のために着てくれるのか?」
ヴィルヘルムの口からそんな言葉が出てくると思っていなかった。
どんな顔をして、彼がそう言っているんだろう。
見たいけど、私の顔はおそらく真っ赤だ。
カタログに目を落としながら、私はこくりと頷いた。
「ヴィルヘルムが着てほしいって言うなら着る」
「そっか」
彼の優しい声色につられて笑顔になる。
いつかヴィルヘルムが選んだウェディングドレスを着て、私が選んだタキシードを着たヴィルヘルムの隣を歩く。
そんな未来が見えた気がした。