マシュマロ(ミクフウ)

「フウちゃんフウちゃん」

今日の業務も無事に終わり、解散となった後。
ミクトが私の手を取る。

「どうかしましたか?ミクト」

「今日も僕の部屋、来ますか?」

業務が終わった後、どちらかの部屋で過ごすのが最近当たり前になってきていた。
だから今日もそうしようと思っていたけれど。

「そのつもりでしたが、今日は都合悪かったですか?」

「そんな事はないです!うふふ、楽しみにしてます」

「?はぁ」

いつものことなのに、なぜかミクトは嬉しそうだ。
怪訝に思いながらも自分の部屋に戻り、身支度を済ませる。
熱いシャワーを浴びると今日の疲れが吹っ飛ぶようだ。
お湯につかるのはかえって疲れが出てしまう気がして、一日休みの日しか入る気にならない。
お気に入りのボディークリームを体に塗り、髪も乾かす。
ミクトの部屋に行く準備を終えたので、私は自分の部屋を出た。
部屋のチャイムを鳴らすと、ミクトが飛び出すような勢いで部屋から出てきた。

「フウちゃん!どうぞ!」

「お邪魔します」

いつも嬉しそうに迎え入れてくれるから私も嬉しいけれど・・・
今日はなんだかおかしい気がする。
部屋に入ると、甘い香りが漂っていた。

「フウちゃんフウちゃん、今日はお疲れですか?」

「特別疲れた、というわけではありませんけど」

今日はデスクワークだったのでくたびれたけれど。
やっぱり動き回っているほうが性分に合っているようだ。
いつもの定位置に座ると、ミクトが私専用のカップを持ってきてくれた。

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

カップを受け取ると、甘い匂いの原因に気付いた。

「ココア・・・ですか?」

「いいえ、ホットチョコレートです。
それに焼いたマシュマロを浮かべてみました」

「焼いた・・・!?ミクトが、ですか!?」

ミクトが料理するとキッチンがめちゃくちゃになるのに、こんな小さなマシュマロを焼くなんて芸当できるのだろうか。
思わずミクトの顔とマシュマロを交互に見てしまう

「僕だってそれくらいできますよ。手先は器用なんだから」

「それは知ってますけど・・・」

「ほら、いいから飲んでください」

「はい、いただきます」

カップに口をつけて、一口飲む。

「・・・美味しい。
ミクト、すっごく美味しいです!」

口の中に広がる甘さはしつこい甘さではなくて、程よい。
焼いたマシュマロの香ばしさも良い。

「良かった、フウちゃんが喜んでくれて」

隣に座っていたミクトが安心したように微笑んでいる。

「やっぱり今の時代、男も料理できないと・・・ですし!」

「ミクト、それは私が頑張ります」

人には向き不向きがあるだろう。
大丈夫、私が頑張るほうがきっと良いはず。
だけど、私の体を気遣ってホットチョコレートを用意してくれた気持ちが凄く嬉しい。

「ありがとうございます、ミクト」

カップを置いてミクトの手を握ると、ミクトの頬が赤くなった。

「今日はよく眠れそうです」

「うふふ、良かった・・・。
それで、その・・・フウちゃん」

「はい」

「明日は僕たち、お休みですね」

「はい」

「・・・今日は僕の部屋に泊まっていきませんか?」

意を決したようにミクトが私の手を握りこむ。
その瞳があまりにも真剣で、ミクトの言う意味を悟ってしまい私も頬が赤くなる。

「・・・明日はお休みですもんね」

たまには、いいだろう。
好きな人と眠って、起きた時も傍にいるなんて幸せなことだ。
こくりと頷くと、ミクトが私に優しいキスをした。

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