「関羽」
庭を散歩していると名前を呼ばれた。
振り返るとそこには孫権様が立っていた。
「どうされたんですか?孫権様」
今日の午後は公務で外出だと聞いていた。
まさか会えるなんて思っていなかったので、つい嬉しくなる。
「ああ、外出から戻ってあなたの顔が見たくなった」
なんでもない事のように孫権様は紡ぐ。
私は頬が火照るのを誤魔化すように彼から視線を逸らす。
「どうかしたのか?関羽」
「いえ、」
口ごもる私を心配したのか、彼は私の額に触れる。
ひんやりとした彼の手が余計自分が火照っていることを訴えているようで恥ずかしい。
「孫権様・・・!」
「少し熱い気がする。休んだほうが良いのではないか?」
「大丈夫です、なんでもありません」
手をどけようと彼の手に触れると逆に握り返される。
「私はあなたのことを心配してるんだ。
どうかいう事を聞いてほしい」
熱があるのに無理をしていると思ったらしく孫権様は真剣な瞳で私に訴える。
もう言い逃れできないじゃない
「・・・孫権様のお言葉が直球で・・・その、照れてしまいました」
「・・・っ」
今度は孫権様が頬を赤らめる番だ。
触れている手がどうしようもなく熱い。
「その・・・関羽」
「はい・・・」
「あなたを抱きしめてもいいだろうか」
駄目なんていうわけがないじゃない。
だから私から彼に抱きついた。
回された腕は思いのほか力強くて、鼓動が早まる。
孫権様に聞かれたらどうしよう、と思いながら私は彼のぬくもりに目を閉じるのだった。