ざあざあと雨音がする。
窓の向こう側は昼間だというのに、すっかり夜のように薄暗い。
「どうかしたのか?姫」
「キングダムに来てから、初めて見た気がする・・・
こんな風に雨が降るの」
「ここは砂漠地帯だからな。あまり雨が降らないな」
「だよね・・・凄い」
なんだろう。
雨の音が心地よくて、ずっと聞いていたいくらいだ。
それに・・・
「ねえシャロン」
「外に出たいと言いたいのかもしれないが、それは聞けないな」
「・・・ちょっとくらいいいじゃない」
なんで考えてた事がバレたんだろう。
不満げに後ろにいるシャロンを見てやろうと振り返ろうとすると、後ろからシャロンの腕が回ってきた。
包み込むように優しく抱き締められる。
「雨に濡れたら体が冷えてしまうだろう」
「すぐ拭けばいいじゃない」
「君が濡れる姿を見たくないんだ」
「じゃあ見なきゃいいんじゃないの?」
抱き締める腕が少しだけ強くなる。
「訂正しよう。君が濡れる姿を他の誰にも見られたくないんだ」
熱っぽい言葉を耳元で囁かれて、ぞくぞくとする。
シャロンはたまにこういう独占欲っていうの?そういうのを見せてくる。
それはわたしにだけ示すものだからちょっと嬉しい。
「それじゃあ仕方ないわね。諦める」
「ああ、そうしてくれ」
回された腕を抱きしめてやる。
シャロンの手は少し冷たかい。
だからわたしの熱を彼に少し分けてやるようにシャロンの手をさする。
「それじゃあ、わたしのお願い聞いてくれる?」
「雨に濡れること以外なら」
「雨が止むまで、こうして抱き締めていて」
雨の音しか聞こえない世界。
それだけでも心地よいけど、もっと心地よく過ごしたいもの。
「ああ、喜んで。私の姫」
窓に映った私たちは、なんだか幸せそうな顔をしていた。