「もう眠ったか?」
「ええ、ぐっすり眠ってる」
子供たちは二人仲良くベッドにもぐりこんで眠っている。
今日は夏彦が久しぶりに遊んでくれたことが嬉しかったようで、はしゃぎ疲れて眠りについたようだ。
夏彦の隣に座ると、そっと肩を抱かれた。
「お前も呑むか?」
「私が弱いの知ってるでしょう」
「ああ。でも、たまには酔ってるお前もみたい」
耳元で囁かれ、くすぐったさに身をよじろうとすれば強く抱き寄せられてしまう。
「夏彦、酔ってる?」
「お前に酔っている」
「ああ、そう。酔ってるのね」
「・・・信じていないだろう」
「今お水持ってくるから待ってて」
悲しそうな顔をする夏彦の頬は少し赤くなっていた。
やっぱり酔っているようだ。
夏彦から体を離し(ついでに飲んでいたグラスも持って)、キッチンへと移動する。
キッチンの窓から空を見ると、星が見えた気がした。
「夏彦、お水持ってきたわよ」
水を汲んで夏彦の下へ戻ると、眠そうな顔をしている夏彦の肩を揺すってグラスを手渡す。
「ああ、ありがとう」
水を飲み干したのを確認すると、夏彦の手をとった。
「ねえ、少し外に出ない?」
「ん、それは構わないが」
「星が見えるのよ、今」
こどもたちを残して遠くに行くわけにはいかないから、家を出たすぐの場所に二人で座る。
「夏彦、見て」
「ああ、綺麗だな」
見上げると、星空が広がっていた。
星空を見るといつも私は、昔夏彦が星空を見せてくれたことを思い出す。
最初は無理やりどこに連れて行くつもりなんだろう、野蛮な人。と思っていたのに。
「ん、どうした?」
気付けば星空じゃなくて、夏彦を見つめてしまっていた。
「なんでもないわ」
夏彦もまだお酒が抜けてないし、少し甘えてもいいだろう。
夏彦の肩によりかかった。
「こうやってふたりで星を見るのはやはり良いな」
「ええ」
こどもたちと一緒に見るのも楽しい。
だけど、こうやって夏彦と二人で星空を見るのはどんなことよりも特別に思える。
「おじいちゃんとおばあちゃんになっても、こうやって星が見れたらいいわね」
「ああ」
夏彦となら、それが出来る気がする。
思わず笑みを零すと、夏彦が優しく微笑んでいた。
目が合って、夏彦の顔が近づく。
それに応えるように目をそっと閉じる。
重なった唇から、愛おしさが伝わるようだった。