「ララ、どこにいるんですか」
ルルが外出して、家には僕とララの二人だけ。
そろそろお昼寝の時間だからと探しているけれどララの部屋にもリビングにもいなかった。
「あ、パパ!」
ようやく見つけた場所は僕とルルの寝室だった。
いつも勝手に入ってはいけないと教えていたはずだが、仕方がない。
「ララ、ここには僕やルルがいない時には入っては駄目だと言っているでしょう」
「うぅ~、ごめんなさい・・・
でもねでもね、これ見てたの!」
ララが広げていたのは、ルルが作っていたアルバムだった。
そこにはまだミルス・クレアの生徒だった頃の僕たちがいた。
・・・まだ僕とルルの身長があまり変わらない頃のものだったので閉じようとするとララが慌てて止めてきた。
「パパ!いっしょに見よ?」
「ですが、ララ。
もうすぐお昼寝の時間ですよ。眠くないんですか?」
「・・・まだ大丈夫!だからいっしょに見よ?」
「分かりました。少しだけですよ」
「うんうん!」
ララを膝に乗せると、一緒にアルバムを覗き込んだ。
次のページをめくると、まだ幼いルルがいた。
あの頃はしょっちゅう押し倒されていて、常に後頭部にはたんこぶが出来ていた。
「ママ、かわいい」
「そうですね、今より可愛いですね」
今はどちらかといえば綺麗になった。
お転婆も少しは落ち着いたが、やっぱり元気いっぱいなのはララを生んでも健在だ。
「パパはちいさいのね?」
「・・・ララ、次に行きましょう」
そこから何ページか進むとルルの髪も現在のように長くなり、僕の身長もすっかり伸びた写真になる。
ルルはいつも楽しそうに笑っている。
僕自身は・・・まあ、自分で言うのもなんだけど嬉しそうな写真が多い。
ルルといるんだからそうなるのも分かるが、写真というものはこうやって残るから苦手だ。
ずっとそう思っていた。ルルに会うまでは。
思い出を残すのも悪くない。
そうして次のページは僕たちの結婚式の写真だった。
「うわあ!ママ、きれい!お姫さまみたい!!」
ララは目を輝かせて、顔を上げてそう訴えた。
「ええ、ルルはお姫様みたいに綺麗でしたよ」
ようやく、ルルと並んで一目見て恋人だと分かるようになった。
誰よりも彼女にふさわしい男になるために努力して、空回ったり、ルルに心配をかけることもあったけれど・・・
「綺麗ですね、ルル・・・」
写真に納まっているルルは幸福そうに微笑んでいた。
ララに話しかけたわけでもなく、ただ自然と零れた言葉だった。
「ねえ、パパ」
「なんですか?」
「わたしもいつか、ママみたいになれる?」
「ええ、なれますよ。あなたはルルの娘なんですから」
まだ嫁にやるときのことは考えたくはないが。
いつかララが結婚する時は、ルルのように幸福だと微笑んでほしい。
「うんうん!じゃあ、大きくなったらララ、ソロとけっこんする!」
「・・・それは駄目です」
「ええー、なんでぇー」
「駄目なものは駄目です。
ほら、そろそろお昼寝しましょう」
アルバムを閉じて、ララを抱きかかえた。
顔を見れば、目がとろんとしている。
ほら、やっぱり眠いのを堪えていた。
そういうところが昔のルルを思い出させる。
今日は僕たちのベッドでお昼寝で構わないだろう。
ベッドに寝かせると、ララは目を閉じた。
「おやすみなさい、ララ」
目を閉じたララにそう囁くと、アルバムを持って部屋を出た。