最近すっかり暑くなって日差しがきつい。
滴り落ちる汗を拭うと自然とため息が出た。
「ランは全然焼けないよねぇ」
「昔から焼けるんじゃなくて、赤くなっちゃうんだよね」
さすがに野外訓練に出ると、日差しから逃げようがない。
訓練を終えて、ようやく日差しが当たらない木陰に逃げ込んだ。
頬に触れると、すっかり火照っていた。
どうやら今日の夜は丁寧に肌の手入れをしないといけなそうだ。
「いいなぁ、私は完璧焼けちゃうもん」
「ユリアナは焼けても健康美!って感じするよ」
「えー、そうかなぁ」
木陰で涼んでいると、他の人たちも戻ってきて休んでいた。
ヴィルヘルムの姿を探すと、少し離れた場所にいるのを見つけた。
おそらく近場で水を被ってきたんだろう。
濡れた髪をかきあげると、上に着ていたシャツを脱いだ。
「・・・っ!」
「ヴィルヘルムってやっぱり凄い筋肉だよねぇ」
ユリアナにしみじみと言うのを聞いて、余計顔が火照る。
そんな私に気付いたのか、ユリアナはにやりと笑って私をつついた。
「私たち以外にも・・・女の子はいると思うんだけど。
ヴィルヘルムの身体、見られちゃうかもよー?」
「・・・もう、ユリアナ!」
ヴィルヘルムは中に着ていたベストも脱ぎたいらしく、前も寛げ始めた。
「いいからいっておいで」
「・・・うん!」
背中を押され、私はヴィルヘルムの元へ駆け寄った。
ヴィルヘルムは駆け寄ってきた私にすぐ気付いてくれた。
「どうした、ラン」
「ヴィルヘルム、こんなところで脱いだら駄目」
「だってあっちーんだよ」
放り投げるようにしてあったシャツを掴むと、なんとか彼にかけようとする。
うっとうしげに避けようとするヴィルヘルムに私もむっとする。
「他の人に見られたらどうするの!」
「誰も見てねーよ」
「私以外の女の子だって見るかもしれないでしょ」
「え?」
袖を通させるのは難しいから上から羽織るような状態にして無理やりボタンをいくつかとめてやる。
驚いたように私を見下ろす瞳が気恥ずかしい。
「他の奴に見られるのが嫌なんだ。へぇー」
「・・・わるい?」
恥ずかしいのを誤魔化すように睨むと、ヴィルヘルムは嬉しそうに笑った。
「お前、可愛いな」
頭をくしゃくしゃと撫でると、ボタンを外して自分から服を着直した。
それから唐突に私の首筋をそっと撫でた。
「んっ、なに?」
「赤くなってるぞ、そこ」
「ああ、それは多分・・・」
撫でた首筋に顔を埋めると、唇が触れた。
ちくり、と痛みが走るとヴィルヘルムは身体を離した。
「じゃあな」
「・・・!ヴィルヘルム!」
「腹減ったから飯食ってくる」
首筋を慌てて押さえる。
どうしよう、すっごく熱い。
「・・・私も行く!」
痕をつけたお返しといわんばかりにヴィルヘルムの腕に抱きついてやる。
暑い暑いといっていたくせに、腕を振り払おうとはしない。
「あー・・・熱いなぁ・・・」
パシュがその光景を見ていて、ぽつりと呟いたのをユリアナは聞き逃さなかった。