マーシャルの背中に抱きつく。
二人で眠るとベッドは余裕がないというのは言い訳だ。
元々、どちらのベッドも一人用のサイズよりずっと大きい。
二人で眠るにはちょうど良いサイズだというのに、私はいつも抱きつく言い訳に使う。
「シエラ」
「なに?」
「いや、あなたからそんな風にするのは珍しいじゃないですか」
顔を上げると、マーシャルの耳朶が見える。
あ、真っ赤だ。
さっきまでもっと赤面するようなことをしていたと思うんだけど・・・
マーシャルはぐいぐい押してくるけど、自分が押されることには相変わらずめっぽう弱い。
背中に口付けると、びくりと身体が跳ねる。
「・・・っ、シエラ・・・」
「なあに?」
マーシャルの反応が面白くて、私は背中に口付けを繰り返す。
背中から腰へ指を這わせる。
傷跡は敏感だから、わざと焦らすように触ってやる。
「~っ!!」
(ふふ、可愛い)
漏れそうになる声を口元を手で覆って堪える姿にどんどん楽しくなっていく。
あとは寄り添って眠るだけだったはずなのに。
いつの間にか嗜虐心を煽られていたんだから仕方がない。
手を彼のおなか付近へ回そうとしたところで、ついに阻まれた。
手を掴むと、私を再び押し倒すような体勢になる。
マーシャルの頬は紅潮していて、黒い瞳は私を捉える。
「あなたは・・・覚悟できてるんでしょうね」
「え」
何が、と言う前に唇は塞がれる。
目を閉じそうになったのに、マーシャルは私を見つめたまま口付け続けるから私も逸らせない。
ああ、嫌だ。
その瞳、何を考えてるか分からないから苦手なのに。
今は凄い分かりやすい。
(そんな風に、私を求めないでよ・・・)
逃げようとする舌は絡めとられ、唇の端から飲みきれない唾液が伝う。
「-っはぁ」
唇は離れたかと思えば、すぐ重なる。
私を抑えていた手は気付けば、私を抱き締める腕になり、私も彼の背中に腕を回す。
口付けを交わしながら、抱き締めあえばようやくマーシャルは目を閉じた。
火照りがひいたはずの身体は、いつの間にかすっかり熱くなっていた。
「責任、取ってくれますか?」
「何の」
「・・・私を煽った責任です」
背中に回していた手を、マーシャルの頭へ移動させる。
数回撫でると、引き寄せて口付ける。
「先に煽ったのはあんたよ。
責任とって」
あんたが可愛い反応したのが悪いんだもの。
だから、今夜は離さないでー
・・・なんて思った私が馬鹿だった。
朝方まで離してもらえず、眠りこけるマーシャルの顔が幸せそうなのを見て、腹が立つような嬉しいような・・・
悔しいから私はマーシャルの頬に手を伸ばした。