「フウちゃん!フウちゃんにはこの服が絶対似合うと思う!」
目を輝かせて私の前に出してきた服は一体どこから見つけてきたんだろうと首をかしげたくなるようなワンピースだった。
ユンの趣味は悪・・・じゃなくて、とても個性的で独創的だ。
水玉にハートがあしらってあるだけでは飽き足らず、裾にはフリルがついていたかと思えば首周りにはファーがついた色んなものを詰め込んだワンピース。
目を輝かせるユンに笑顔を作る。
「私には似合わないです。それに服は自分で選びたいです」
私服はあまり着る機会がないのに、その少ない機会にとんでもない服を着たくない。
たとえ、それが最愛の人が選んだ服だとしても。
「フウちゃんがそういうんなら仕方がないけど、似合うと思うんだけどなー。
ここのファーなんてフウちゃんの髪の色に似てるし」
「ユン、そろそろ別のお店に行きませんか?」
ユンの手からワンピースを奪い取り、ワンピースが陳列されている場所に戻すとユンを引っ張るようにしてお店を後にした。
「ユン、どこか行きたいところありますか?」
「んー・・・」
ユンの顔を見ると、なぜか頬を赤らめて目を泳がせていた。
どうしたんだろう、とじっと見つめるとコホンとユンが咳払いをした。
「フウちゃんから積極的にくっついてくれると嬉しくなっちゃうっていうか・・・
照れちゃうっていうか柔らかいっていうか」
そう言われて気付いた。
ユンの腕をしっかりと掴んでいた為、胸が当たっていた。
慌てて、ユンの腕を体から離す。
「ちぇー」
「ユンのばか。
恥ずかしいこと言わないでください」
「だってフウちゃんからくっついてきたのに」
「それはユンが・・・!」
私の手から腕が解放されると、その腕で私の腰を抱く。
離れた距離はゼロになり、密着した状態で歩くはめになる。
「ユン、恥ずかしいです」
「ふふ、俺はこうやってフウちゃんとラブラブーっていうの見せ付けれるから嬉しいけどな」
ユンは人前でも気にしない人だ。
私も大分慣れてきたとはいえ、やっぱり街中でこんなに密着して歩くのは恥ずかしい。
「照れてるフウちゃんも可愛い」
こめかみにちゅっと口付けると、私の腰から手を離して、そのまま手を繋ぐ。
「はやく帰って二人になりたいなあ」
「今日は外を満喫するって約束です。
もう少しのんびりしましょう」
ユンはすぐ天遣塔に帰りたがる。
二人きりの部屋も心地よいし、人目を気にしないで良いのは良いけど。
せっかくの休みだからもう少し外でユンと歩きたい。
私のその気持ちを理解したのか、ユンは私に微笑んだ。
「よし、今日はやっぱりフウちゃんに俺の選んだ服をプレゼントするまで帰らない!」
「・・・それは遠慮します」
久しぶりの休暇。
私たちは、恋人としての時間を過ごした。