「んっ・・・はぁっ・・・!」
互いの唇を貪りながら、奥へと突き進む。
きつく締め付けられる度、イってしまいそうになるのを堪える。
ランの好きな部分をこするように動くと、唇から声が漏れる。
「はっ、ぁ・・・っ、ラン・・・っ、すきだ」
唇を離す合間に囁く。
ランは涙で濡れた瞳で俺を見上げる。
その瞳がたまらなく愛おしい。
「わたしも・・・っ!」
きつく抱き締めて、そのままランの中で果てた。
呼吸を整える間、ランを押しつぶさないように力を加減する。
ランとこうして身体を重ねるのは何度目だろうか。
最初の頃は無理をさせすぎて、翌日泣きそうな顔をしているランを見て申し訳なくなったので、それ以来気をつけるようにしている。
「ラン、身体大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
にこりと笑ってみせるランの額に口付ける。
身体を拭いてやらないと、と思いながらもまだ動く気にならずランを抱き締める。
ランの身体はまだ火照っていて、それにつられて反応しそうになる自分を堪える。
ただ、抱き締めているだけでも満たされるのに、どうしてもっともっと、と求めてしまうんだろう。
ランのぬくもりが、どうしようもなく愛おしい。
変わらないと思っていた。
いつまでも、こうして寄り添っていられると思っていた。
◆
夕食の支度をしていると、突然吐き気に襲われる。
口元を押さえて誤魔化していると、ヴィルヘルムが不思議そうな顔をして近づいてきた。
「どうした?具合悪いのか?」
「ん、そうなのかも。急に気持ち悪くなって・・・」
「飯の支度は俺がやるからお前は休んでろ」
「え、でも」
「いいから」
手を引かれ、ソファに横にさせられる。
タオルケットを胸のあたりまでかけると、ヴィルヘルムが私の頭を優しくなでてくれた。
「飯できるまで大人しくしてろよ」
「うん・・・ありがとう」
ヴィルヘルムがキッチンに立つなんてなかなかない。
料理なんて出来ないだろう、と不安に思っていると次第に良い香りがしてきた。
「ラン、できたぞ」
多分30分も経っていないだろう。
ヴィルヘルムが作ってくれたのは消化に良さそうなリゾットだった。
「起きられるか?」
「うん、ありがとう」
私の背中に手を回し、そっと起き上がらせてくれる。
「ヴィルヘルム、料理できたんだね」
「まぁ、これくらいはな」
スプーンを口へ運ぶとさっぱりしていて、凄く食べやすい。
私の様子をじっと見つめるヴィルヘルムに笑みが零れた。
「ありがとう、凄く美味しい」
「そっか、良かった」
彼の全てを知っているとは思っていないけれど、私の知らないヴィルヘルムがいたんだ、と思うとなんだか胸が締め付けられる。
それが嫌だとかじゃない。
知らない一面を見る度、私はヴィルヘルムに惹かれていく気がする。
自分の異変に気付いたのはそれから少し経ってからだった。
カレンダーを見て、確認する。
それに最近の突然の体調不良。
そして私の予想は当たっていた。
「ヴィルヘルム」
「ん?どうした?」
「話があるの」
帰ってきたヴィルヘルムをソファに呼び、並んで座る。
不思議そうな顔をして、ヴィルヘルムは私を見つめた。
「あのね、家族が増えるわ」
「・・・誰だ?」
意を決して口を開くと、意味が伝わらなかったようでヴィルヘルムは首をかしげた。
だから彼の手を取り、自分のおなかへ持っていく。
「ここにいるわ」
「え・・・?」
「赤ちゃんが出来たの」
ヴィルヘルムは特殊な身体だ。
元々は人間だったといえど、魔剣になり、そして再び人間になった。彼と私の間に子供が出来るかどうかなんて分からなかった。
二人で一生寄り添って生きていければそれでいいって私自身も思っていた。
だけど・・・
「本当なのか?」
「うん」
呆然としていたヴィルヘルムの瞳から涙が零れた。
「・・・ここに俺とお前の子供が?」
「そうだよ、ヴィルヘルム。
ヴィルヘルムはパパになるんだよ」
「よくやった、ラン」
ぎゅっと抱き締められ、ヴィルヘルムの顔が首筋に埋められる。
涙が、零れ落ちる。
「ありがとな、ラン」
「・・・私も、ありがとうだよ。ヴィルヘルム」
子供が出来たと聞いて、ヴィルヘルムはなんていうだろうって考えてた。
喜んでくれるかな、とそわそわしていた。
まさか泣いて喜んでくれるなんて思ってなかった。
「俺、お前の事もっと大事にするから。
生まれてくる子供も大事にする」
「うん、そうだね。二人でがんばろうね」
「ああ」
涙で濡れた頬を互いに拭い合うと、唇を重ねた。