優しい時間(ヴィルラン)

ある日、コレットから綺麗な装飾が施された箱を貰った。
蓋を開けると、綺麗な音色を奏でてくれる・・・オルゴールだった。

「ん?どうしたんだ、それ」

「コレットに貰ったの」

二人きりの時間。
森の木陰で昼食を取った後、二人でなんとなく過ごす時間。
私の大好きな時間。
ヴィルヘルムとならどこだって幸せな場所になる。
たまには街でデートしたり、遠出もしたいけれど、
それでも二人で過ごすこの時間はやっぱりとっても大切だった。
ヴィルヘルムに聞かせてあげようと持ってきたオルゴール。
そっと開くと、綺麗な音色を奏で始める。
ヴィルヘルムを目を閉じて、聞き入っているようだった。

コレットが言っていた。
私とヴィルヘルムの髪の色はとても綺麗だと。
二人が並んでいるだけで花が咲いたようにその場が明るくなると。
確かに私の髪の色は珍しいし、ヴィルヘルムの髪の色は鮮やかな紅で目を奪われる。

「いい音色だな」

「うん」

オルゴールの音が止むと、ヴィルヘルムは目を開き、私を見つめて微笑んだ。
だから私もそれに応えるように微笑む。

「ねぇ、ヴィルヘルムの髪の色って綺麗だよね」

オルゴールの蓋をそっと閉じて、膝の上にそれを乗せながら私は彼の髪を見つめた。

「そうか?俺はお前の髪のほうが綺麗だと思うけど」

器用に自分の指に私の髪をくるくると巻きつける。
それからそこにそっと口付けられて、思わず心臓が高鳴る。
何度も口付けを交わしているのに。
私はまだ、そういう行為に慣れない。
だって、好きな人とする事全て特別だもの。

「・・顔赤いぞ」

「だって、急にそんな事するから」

赤くなっていることなんて分かっていた。
だけど、指摘されると恥ずかしくて、思わず身体ごと彼に背を向けた。

「ラン」

すると、彼の腕が回されて、後ろから抱きすくめられる格好になった。
ドクンドクン、と彼の鼓動が伝わってくる。

「ヴィルヘルム、鼓動早い」

「うるせ、
・・・お前のこと、好きだからそうなるんだよ」

顔は見えないけど、きっとヴィルヘルムも私も真っ赤になっているだろう。
恥ずかしいけど、離れがたくて、私はヴィルヘルムの腕をきゅっと握った。

「なぁ、もう一回オルゴール聴きたい」

「え?」

「駄目か?」

「ううん、気に入ってくれて嬉しい」

膝の上にあったオルゴールをもう一度開き、ねじを巻く。
ジジジ、と音がした後先ほどと同じように音色を奏ではじめる。

「オルゴール聴き終わるまで、このままでもいいだろ?」

「・・・うん」

目を閉じて、ヴィルヘルムの体温を感じながら私はオルゴールの音色に聞き入った。
コレットに今度会ったらお礼を言わないと。
優しい時間をありがとうって。
二人で過ごすいつもの時間が少し特別なモノになったから。

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