素直じゃない僕を幸せにしてくれるのは君の存在。(ガラアル)

春の暖かな日差しが心地よい。
花たちも心なしか普段より生き生きして見える。
習慣の手入れを終え、いくつかの花を摘んでその場を後にする。
この花はアルに手渡そう。
きっと彼女はこの花に負けないような笑顔を見せてくれるだろう。
そう考えると自然と笑みがこぼれる。
アルの部屋を訪ねるとマリーが部屋を掃除していた。

「あれ、アルは?」

「姫王でしたら図書室へ行くとおっしゃっていました」

部屋に入ってきた僕を見て、マリーはにこりと微笑むと手元にある花を見た。

「そのお花、姫王へプレゼントですか?」

「ああ、飾っておいてもらってもいい?」

「それは構いませんが、姫王はきっと直接頂くほうが喜ぶと思います」

手渡そうと一歩進んだが、その言葉を聞いて僕は回れ右をした。

「・・・ありがと、そうする」

ぱたん、と部屋のドアを閉じると、図書室へと急いだ。
アルの喜ぶ顔が見たい。
そんな小さな事で僕はこんなにも心がざわめく。
彼女を好きになってから、いや・・・想いが通じ合ってからアルのことを考える時間が増えた。
素直になれない自分だけれど、彼女の喜ぶ顔を見たいし、僕だけを見ていて欲しい。
ずっと腕の中に閉じ込めておきたい。
そんな事を願いながら隣にいる自分を浅ましく想うこともある。
だけど、アルはそれに気付いているのか、気付いていないのか分からないが幸せだと笑ってくれる。
僕も幸せだ。
君がいてくれるから、幸せなんだ。

図書室の扉が少し軋むような音を立てて開いた。
中をのぞくと窓の近くにある机にアルの後姿があった。

「アル」

いつもなら名前を呼ぶとすぐ振り返るが、今日は何も反応なし。
隣まで行き、顔を覗くと転寝しているようだ。
全く・・・警戒心の欠片もないんだから。
もしこれは僕じゃなかったら。
マーリンやモードレットだったら・・・
何かされていたかもしれないのに。

「・・・」

そう想うと少しだけ腹が立ってきた。
軽く顎を持ち上げて、桜色の唇へそっと口付けた。
ぴくりと、彼女の身体が反応した。

「・・・っ、」

目を開けると、どうやら目を覚ましたらしい彼女が驚いた表情で僕を見ていた。
それに構わず目を閉じて、更に深い口付けを贈った。

「・・・ガラハット!」

暫くして唇を離すと顔を真っ赤にしたアルが恥ずかしそうに上目遣いでこちらを見ていた。

「馬鹿じゃないの、こんなところで転寝して。
何かあったらどうするんだよ」

「う・・・ごめんなさい。
でも、私にはガラハットがいるって皆知ってるし」

「知っててもちょっかい出してくる奴だっているんだから!」

「・・・はい」

心配な気持ちと、照れ隠しと。
ああ、優しくしてあげたいのにいっつもこうだ。
しゅんとするアルを見て、少し言いすぎたと気付いても遅い。
自分で叱ったくせに少し気まずい気持ちになって視線をさ迷わすと、手元の花を思い出した。

「これ」

彼女の前に花束を差し出すとしゅんとしていたのが嘘のようにぱっと明るい表情へ変わった。

「うわぁ!綺麗!」

「アルに」

「嬉しい!ありがとう!」

花束を受け取ると嬉しそうに笑い、花の香りを確かめる。
アルとだから、僕は幸せなんだ。

「アル、大好きだよ」

「私も、ガラハットが大好きよ」

見つめ合って微笑むと、どちらからともなく顔を近づけて
もう一度キスをした。

春の柔らかな日差しが、僕たちを祝福しているかのようだった。

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