ピアスはとてつもなく極端だ。
私を独占したいという理由から軟禁状態にいたっている。
身体は小さくなってしまったけど、城の中は快適でついついくつろいでいる自分がいる。
(・・・私、すっかり流されてるわね)
部屋にあった本をぺらぺらとめくりながらぼんやりと考えている。
ピアスは仕事に行かなくちゃいけないって言って出掛けていった。
あとどれくらいで帰ってくるんだろうか。
最初はピアスの気持ちが治まるまで、と思って自分の仕事も調整していたけれど
ピアスは私のことを城から出す気がなく、結局仕事をやめざるを得なくなってしまった。
以前のようにふらりと誰かのところに遊びにいくことも出来ない。
そう、ピアスが望んだ通り私にはピアスしかいなくなったのだ。
「ただいま、アリス」
部屋に入ってきたピアスはどことなくご機嫌だった。
私の姿を見つけるなり駆け寄ってきてきつく抱き締められる。
相変わらず行動が早いな、と思っていると微かに生臭い・・・おそらく血だろう。
血の匂いがピアスの身体から香る。
「・・・ピアス、離れて」
「え、どうして?どうして離れなきゃいけないの?」
「あなた、血の匂いがする」
「血の匂い?部屋に帰って綺麗にしてきたのに?
ぎゅうってしたら駄目なの?」
「・・・ピアス」
なんと言い聞かせていいのか言葉が浮かばず、困った顔をしてピアスを見つめてしまった。
すぅ、とピアスの瞳が変わった気がした。
「嫌いになった?血の匂いがする俺は嫌い?」
「・・・嫌いじゃないけど、・・・っん」
キスで口をふさがれる。
なんだろう、薬を口移しで飲まされて以来、触れ合うだけのキスですまなくなってきている。
唇を舌でこじ開けられ、そのまま舌を絡められる。
漏れる吐息が色っぽくて、私は気付けばキスに夢中になっていた。
「-っはぁ、」
唇がようやく解放され、呼吸を整えようとするとそのまま床に押し倒された。
「ねえ、アリス。アリスはどこまでしたら嫌いになるの?
血の匂いがする俺は嫌い?ちゅうする俺は嫌い?」
動きを封じるように、手首を床に押さえつけられる。
至近距離で見つめられて、私は息を飲んだ。
馬鹿みたいだ。私、凄くドキドキしている。
恐怖からなのか、それともこれから何かされることに対しての期待なのか。
「嫌いじゃないっていつも言ってるでしょ?
それに・・・好きじゃなかったら今みたいなキスだって許さないわ」
不意打ちだったし、拒みようがなかったけれど。
本気でいやだったら舌を噛んでやったはずだ。
嫌いになる?って確認しながら行為を進めるってどういう事なんだろう。
「本当?本当に?アリス、俺のこと好き?」
「前にも言ったと思うんだけど・・・」
ふう、とため息をつくがもうそんな事はどうだっていいようだ。
目を輝かせて、私の首筋に顔を埋めてくる。
「アリス、可愛い。アリスのこと、食べたい」
「ん?」
どうしてそうなるの?
可愛いとは口癖のように言われているけれど、食べたいはあまり言われない。
それにいつもの可愛らしい雰囲気じゃなくて、もっと含んだ物言いだ。
「んっー!」
首筋に歯をたてられ、思わず声が漏れた。
「アリス、やっぱり美味しい」
「何言ってるの、やめなさい!」
おそらく後で見たらなんらかの痕が残っているだろう首筋。
私の制止なんてきかないで、ピアスは首筋を噛んだり舐めたりを繰り返した。
「・・・んっ、はぁ・・・」
「アリス、可愛い。
アリス、大好き。俺、アリスに嫌われないように頑張るから。
ずっと俺のものでいてね」
ぼやけた視界でピアスが微笑んでいた。
ああ、もう・・・