「姉さん、それどうしたの?」
「これ?エリカがくれたの」
陸がぎょっとしたように私が抱える段ボールに入った沢山の球根を指摘した。
「典薬寮で発注しすぎたのが届いたって言ってたよ」
「税金の無駄遣いなんじゃぁ・・・」
「ねぇ、陸。庭に埋めよう!」
「ああ、いいよ」
こんなに沢山の球根を貰うことなんて早々ない事だ。
せっかく春だし、庭に沢山花が咲いたら綺麗だなぁって想像するだけでわくわくする。
うきうきしている私の腕の中から段ボールを取り、陸は先に歩き始めた。
「ありがとう、陸」
「俺は男なんだからいつでも頼って」
「うん、ありがとう」
陸の隣に駆け寄ると陸の腕にそっと触れる。
「・・・っ!」
「・・・駄目かな」
ちらりと陸の表情を盗み見れば真っ赤になりながら正面を見つめていた。
「いや・・・駄目じゃない。
むしろ嬉しい」
「なら良かった」
陸といると安心する。
それは小さい頃から変わらないし、恋人同士になっても変わることがなかった。
庭へ移動するとシャベルを用意する。
最近花を植えていなかったせいで庭の花壇の土や少し固くなっていた。
じょうろに水をたっぷりと入れて、まずは水をまく。
それから雑草を片付けるとようやくシャベルで土を掘り返した。
「ねぇ、姉さん」
「なあに?」
「これ、何の球根なの?」
隣で作業をする陸がそういえば、とたずねる。
「チューリップの球根なんだって」
「チューリップか、綺麗だね」
「うん!」
二人で話をしながら作業を進めていると、ふと昔のことを思い出した。
「なんかこうやって土いじってると小さい頃を思い出すね」
「ああ、そうだね。姉さんってばすぐ転んで泥だらけになるから」
「それは陸もだったでしょう?」
陸の手を引いて歩いていた私はそのまま転ぶことがよくあった。
そうすると手を繋いでいる陸も一緒に転ぶのだ。
「手を離せば陸は転ばないのに」
「だって姉さんの手、離したくなかったんだよ」
なんでもない事のように陸は言う。
でも私は恥ずかしくて、顔が熱くなっていく。
「陸・・・あの、」
「ん?」
「私を好きになってくれてありがとう」
今、こうして何気ない時間を幸せに過ごせるのは陸がいてくれるから。
他のみんなにも沢山感謝しているけれど、やっぱり陸への気持ちとは比べ物にならない。私の言葉を受けて、陸は優しく微笑んだ。
「俺も、好きになってくれてありがとう」
「うん」
それから球根を沢山植えて、最後に水をまいてお終い。
「何色のチューリップが咲くんだろうね」
「咲くまでお楽しみってエリカが言ってたよ」
「多分知らないだけなんじゃ・・・」
「ふふ、だと思う。
でも、ピンク色のチューリップだったら良いなぁ」
「姉さん、ピンク好きだもんね」
「それもあるけど、ピンクのチューリップは」
「ん、なに?」
思わず言ってしまいそうになって堪える。
陸は不思議そうな顔をしているが、私は微笑んで誤魔化した。