X月XX日、晴れ。
今日は授業が終わった後、エリアスに呼び出された。
身体の調子はどうだとかこうだとか言う話をされた。
特に異変はないと伝えるとひとまず会話終了。
俺と話すときはいつも困った顔をするエリアス。
俺には関係ないから軽くあしらおうとするとランに怒られる。
「もう・・・ヴィルヘルムったら。
エリアス教官は教官なんだからあんまり酷い態度取ったら駄目なんだよ」
「あー、はいはい」
ランはこう見えて説教をすると長い。
話半分で聞いていると、それさえも見透かされているようでランは少し不機嫌になる。
「あー・・・俺が悪かった」
「ちゃんと悪いって分かってるなら良いよ」
謝ればひとまず機嫌は直る。
授業が終わって、これからの時間は空いている。
それなら二人でゆっくり過ごしたい。
こいつはお人好しだからすぐ色んな奴に絡まれる。
ほら、今だって。
「あ、ラン!ちょうど良かった。これから武器庫の掃除あるんだけど空いてたら付き合ってくれないか?」
パシュが申し訳なさそうにランを拝む。
ランはちらりと俺を見て、片手でごめんねと訴えるとパシュに笑顔を作った。
「うん、大丈夫だよ」
「マジ!?さんきゅー!
じゃあ行こうぜ!」
パシュがランを誘導しようとするのがなんだか気に入らなくて、俺はランの手を取っていた。
「ヴィルヘルムっ!?」
驚いたようなランの声が聞こえるが無視してそのまま手を引っ張っていく。
パシュはあっけに取られたようにぽかんとしていたが、それに構わずランを引っ張っていった。
「ちょっと、ヴィルヘルム・・・!」
しばらく歩いていくと、ランは慌てたような声を出す。
「なんだよ」
「手、痛い・・・」
「あ、悪い」
掴んでいた手を離すと、ランは少し頬を赤らめて俺を見上げた。
「ねぇ、どうしてそんなに不機嫌になったの?」
「別に不機嫌じゃ」
「本当に?」
じっと見つめられると弱い。
俺はその視線から逃げるように顔を逸らす。
「・・・俺と一緒にいるよりあいつと一緒にいるのは許せない」
「・・・うん」
「心狭いと思っただろ」
「ううん、そうじゃなくて嬉しい」
離したはずの手を握られて俺はランを見つめた。
赤くなったままの頬と、嬉しそうな笑みが見えた。
「ヴィルヘルムがそういう風にほかの人にヤキモチ妬いてくれるの、私は嬉しいな」
「・・・変な奴」
それしか言えず、俺は手を握りかえした。
慣れない日記を書いて、俺はそれを閉じた。
エリアスに言われて仕方なく日記をつけているんだけど、
日記なんてものを書いてもあいつとの話しかないんだけど、まぁいいのか?
これを提出されたエリアスが苦笑いなのか恥ずかしくて赤面しているのか分からないが微妙な顔をされたことだけは覚えておこうか